中村天風著「真人生の探求」の要点を、恣意的に抜粋し、要約します。これは、わたしが個人的に「大事だな、これはいいな」と思った部分を恣意的に要約するものです。したがいまして詳細を検討したい向きは、実際に本書を手にとって読まれるといいと思います。
生命身体の健康のためには、心を積極的に保たなければならない。また、精神を使用するためには、必ず精神を統一して行わなければならない。
精神を積極的にするとは、日常生活の上で、精神態度を「明るく」「朗らかに」「活き活きとした勇ましさ」を持つようにする。
積極的精神を作成するための具体的な方法としては、
1、観念要素の更改
2、積極的観念の集中力養成の実践
3、神経反射作用の調節
があげられる。
1の、観念要素の更改とは、心の中で消極的な考えを減らし、積極的な考えをできるだけ多く持つようにすること。その方法として、自己暗示の手段が有効。夜寝がけの際は、人間の精神の暗示感受性が、最も旺盛になる時なので、寝る前は、無邪気に、明るさとか朗らかさとか活き活きとした勇ましさを感じることを思考連想するようにすること。また、鏡に向かって「信念が強くなる!」「神経過敏でなくなる!」「もっと元気が出る!」などという言葉を、真剣な気分で発声するとよい。もちろん、いつでも真剣な気持ちになれるという人は、夜の寝がけに限らず、いつでも自己暗示を行ってよい。この方法はなれてくると、効果が現れるまでの期間がだんだん短くなってくる。二つ目の暗示、三つ目の暗示と進んで行く間に、三ヶ月、二ヶ月と、所用する時間が短くなっていく。熱心に行っていれば、数年後には、三日か五日で効果が出るようになる。
応用方法としては、学生の成績不良などにも効果がある。ただしその場合命令の言葉を「成績がよくなる」といってはよくない。そういう場合は、その人の不得手なものを、「○○が好きになる!」と命令するとよい。
病などの場合は、「病を気にしない!」という命令語が適当である。
いずれの場合も鏡に向かった自分に言うのであるから、「なんじは」「お前は」といった主語をつけてやるとよい。
併行して、朝目が覚めたら「今日は信念が強い!」「私は信念が強くなった!」などという断定暗示法を用いるとよい。これも、一日何度も口にするとよい。
2の積極的観念の集中とは、前述の方法で培った積極的精神を、定着させる方法。
日常の言動を積極的なものにすること。感謝の生活をすること、「怒るなかれ」「悲しむなかれ」「おそれるなかれ」の「三勿」を実行すること。自分を内省してみて、消極的な考えや気持ちは否、積極的な考えや気持ちは是と区別を付ける、などなどを行うとよい。
3、神経反射作用の調節法
○クンバハカ法
肛門を閉め、肩を下げ、下腹部に力を入れる。このまま、深呼吸をする。できるだけ細く長く行うこと。この時、体の中の活力を送りたい部分に、吸気が流れ込んでいくようにイメージをするとよい。吸いきったら、一瞬だけ息を止め、このとき活力が固定されたとイメージするとよい。吐き出す息は、ややいきみ加減に息吹として吐き出す。一回に五呼吸を限度とすること。複数回やる場合は五分ないし十数分の間をおいて、何度か繰り返すこと。空気のきれいなところでやること。
少しでも疲れたとか、これから活動力を必要とする仕事に取りかかろうとするときには、すかさず実行するとよい。慣れた仕事をしているときならば、仕事をしながらやってもよい。
応用として「養動法」がある。静座してクンバハカ法を行いながら、頭部でひらがなの「の」の字を書くつもりで、静かに上体を揺らす。「の」の字を書くつもりで始めた動きが上下になったり前後になったりすることがあるが、それは自然にまかせておいてよい。
これをやっているとだんだん自分の姿勢の欠点や、病患や痛みの真の部位が、意識的にわかってくる。胃の具合の悪いために頭痛を感じたり、腸の悪いために腰痛を感じたりすることがあるが、そうしたことがわかるようになってくる。
○精神統一の要領
たいていの人が、精神統一ということは、目の前に現れた事物現象や仕事などに、一心不乱に心が注がれる状態だと考えているが、これはまちがいである。これは精神の傾注であり、執着であり、凝滞であり、放心である。
真正の精神統一とは、心の前に現れた事物現象その他の事柄を、心の中に集約集中させることである。
たとえば、何か非常におもしろいものを見聞きした場合などは、あえて意識的に一心不乱にならずとも、自然とそうなっている。精神統一とは、心を何かにとらわれさせるのではなく、心で心の対応するものを完全に補足することである。
精神を統一するためには、意識を明瞭にしなければならない。心の中の観念を分裂させないこと。観念の分裂とは、たとえば仕事や読書をしながら他のことを考えたりすることである。要するに心ここにあらずという状態を作らないこと。観念を分裂させないためには、せかせかと心を急がせず、落ち着けること。興味の薄いことをするときも興味のない事柄の中に興味を見つけようとすること。どんな些細なものにも価値を見いだそうという心がけを持つこと。熟練したことを行うときも観念が分裂しやすいので注意する。
観念の分裂を防ぐ一番手っとり早い手段は、何事にも真剣な気持ちで取り組むことである。
真剣な気持ちで取り組んだほうが精神の疲労は少ない。気の抜けた状態でいやいやながらやると、すぐに疲労する。
神経衰弱症にかかっている人や精神のまとまらない散漫な人などは、なにをしてもすぐ倦怠感に襲われる。根気が続かない。これは精神の疲労が急速にくるためである。
○病を早く回復せしめる秘訣
ふだんから積極精神を養うことも大事だが、病にかかったと自覚したら「なにくそ!これしきの病に負けるものか!!」と、そういう時にこそ無理にでも元気を出すことである。ただし、元気を出すということは、体を無理に我慢して、起きて働かせようということではない。体はもちろん安静にして、精神状態をその病に屈服させないように、積極的に保つことである。
[結論]
生活の目標を「霊性の満足」におくこと。霊性の満足を目標とするとは、常に「人の世のためになることをする」ということである。これは自分の人生を他人の犠牲にするということではない。できる限り人のため、世のためになることを言動するということを、自己人生の楽しみとするという気分になることである。そうすれば、なにも大した努力をする必要なく、それが期せずして霊性満足の生活となる。
(中村天風著「真人生の探求」天風会 昭和二十二年初版発行)















