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香る蜘蛛

竹浪明


どこから入ってくるのか
寝室の壁を星の影が軽やかに渡る。
カーテンを引き
灯りを消して待っていた。
それは絹糸で編んだ香合を
音もなく運ぶ蜘蛛。
やがて仄かな香りに包まれて
閉ざされた寝室が香合になる。

シーツは白い花びらの海
熱い碇が逆さに浮かぶ。
つやめく絹は銀となり
蜘蛛の足は花の陰に泳ぎ出す。
精緻な銀細工の馬車が
やわらかな波間を駆ける。
蛸の影が牽く馬車に乗り
恋人達が囁き合っている。

大音響と共に星が炸裂し
海が燃え上がる。
ふたりは光の海に飛び込んで
波と砕ける花火に濡れた。
潮の香りに火薬の匂いが混じり
星々が火花に紛れ降り注ぐ。
あれ以来夜空に星の数は増え
波音は遠い叫びと囁きを繰り返す。

あのまま燃える海に溺れたら
香りの奥に溶け込めただろうか?
妖しい牽き手と銀の馬車を残し
どうやって帰ったのか覚えていない。
香る蜘蛛の網に
いつまでも捕われていたい。
見えない糸に残る余韻に
眠りながら震えていた。




竹浪 明 (たけなみ あきら)
http://takenamiakira.jp
映像作家・文筆家・東京造形大学映画専攻非常勤講師。
「蘭賞」(俳句)、「平間至写真賞優秀賞」「文芸社ビジュアルアート社長賞」他受賞。
俳句×写真集『恐竜×ヴィーナス=17文字』(文芸社)、 写真集『象と大樹と子供たち』(角川学芸出版・収録写真によるTシャツが「赤十字グッズ」に)他。
監督映画『のら暦*ねこ休みネコ遊ビ*』(UPLINK)他。

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2 コメント “香る蜘蛛”

  1. Victoria Romero Silva より:

    Me gusta, Akira

    El número de las estrellas ha crecido desde entonces…

    Según dices con esta araña juguetona.

    Victoria

  2. Victoria Romero Silva より:

    Tu blog es muy tramposo, cambia las palabras.

    Habrá que leer, entre líneas

    e interpretar

    para soñar

    Tu Victoria

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