畦道の名残留めた細い路地の角
モルタル塗装の外壁のヤレ具合
酩酒と掲げられた看板の長屋
二階の小さなバルコニーで
女が煙草を噴かしている
ああ美しく腐たれている
真黒な下水溝には
犬や猫の死骸や
嬰児が浮かんでいたという
酔漢はラビリントを低回し
地べたに仆れ 滑稽に果て
側らの看板には
ぬけられますと書かれていた
火焔が裂いた割れ目から
赤い舌が針葉樹に絡みつき
ある私娼は奇声を発した
ビラの破けた電柱のした
鋭い眼光の無数の烏たち
その俤に粋なる媚態を嗅ぎ
わが情調の暗渠に蜩は鳴き
目立たぬように一塊になる
二十羽の鳩の声が低く唸る
豚の町 美腐なる町の一角
脇の小怪に映る
春は幻
名もなき女たち
沼へ 川逍遥に菩提を夢み
何処からか 隠れた花弁一枚
舞い戻る
昼過ぎ
煤けた軒に仄かな
厚化粧の残り香の風が起つ
美腐なる町
國米隆弘















