書いてよ
と男は言った白い太陽の白の中へ熱を放つように白い指先で土を弄りながら煙草を喫む息が白く空を染めるそれは白い花
花の咲く草原だった
雲ひとつない空へ突きさすビルディングからかつて見下ろした草原だった
遠くには牛がいて
牛乳をこぼした子供はいちごをもらえない
コノ感情ヲドウスレバ良イデスカ?
トラウマだと喚き立てては草を抜く抜くよりほかない指先を虚しく雨に晒した昨日コンクリートに横たえる死は無惨だった草の粘液白い粘液撒き散らされた草の匂いは皮膚から離れないええ確かにトラウマでした受話器の向こうからか細い声が響いてそちらへ呼ばれるということを願っていましたガラスの破片だけが眩しく 愛しています あらゆる記録など機能しないことは分かっていて駐車場で激写したフィルムももう捨ててしまおういつかのカルテもそのように廃棄され今日は快晴 嘘のような快晴 きっと嘘に違いなく
地続きの道を走っていった
窓辺に今日も花は咲き
白い日記帳に白い息を吐く男の名を書く
いつか身を埋める土の上で
草の匂いは消えない
皮膚と皮膚が触れる
白い指先のことも
こぼれた白いミルクのことも
それが本当になるのなら
望み通り書く
全部
全部書く
白昼夢
一方井亜稀









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