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Smorking is blind & tired

一方井亜稀



7㎎

パルプ工場が見える 川沿いの鉛色 特急は予断無く走り続けていた 午後4時の光がシートを赤に染めその背面に付着する何かが剥がされた跡(は××の余白)
「残骸ばかりを追う人生でした」
男が飲み残したライムソーダをトレイごとダストボックスへ放った夜明け前とか干からびたコンタクトレンズを部屋の隅で見つけた真夜中とかひとり だったことを隠蔽しようと火を付けて 燃やして 灰ごと 捨てた 散文だった 行為 それは紛れもなく

 5㎎

箱を開けると朝 という仕掛けだ残念だった その白いケースの1本が導く5分とは何に換算されるというのか 夜行に乗った覚えはないからまだ覚えているのだ背骨の辺りが線路をなぞる 単純な朝 カーテンを開けると陽が注いでしまうのはインスタントな方程式だと括ってしまいたい 深刻な手の内を明かしてみたいと嘯いて今日は1日が余白だ 吐く息はこんなにも白く腹と背中の皮がくっつくから前後ろが見えないこんなにも馬鹿げた朝が抒情的だと生きた人間が呟くから途方に暮れる

 3㎎

故に覗く窓 陽が沈みその先にも道があるのに歩けない 赤い 部屋が赤に染まる天井にクモの糸が絡まってタールの色が眼の奥まで届かない 禁煙だ ある者は列を成しある者ははぐれた先でプラカードを掲げ もう始まったからには止まない運動 手と手を取り合い世界を一周するのは容易いことなのです ドクター 白衣は茶に染まるためにあるのではないのか

 1㎎

とうとう来てしまった 速度が導く人生とはタバコがない人生と同じで健全です 掻きむしられる背面 レールの感触が垢になって残っているのをそっと剥がし瘡蓋を剥がすようにだ 冷静でいられる筈がないから誰か1本譲ってください指先が抒情とやらをなぞりながら明け透けな告白に耐える 耐えうる 残骸ばかりを追う人生なら○がないいっそ全て崩して更新などしないいつかのパルプ工場よ 煙は流れ何処へ流れてゆくのかなど知らない知らないが 口内の粘着物を静かに揉みほぐしてゆく過程こそ余白と呼ぶにふさわしい



一方井 亜稀(いっかたい あき)

1979年 宮城県生まれ
詩誌「ウルトラ」12号・13号に寄稿
詩誌「kader0d」 3,4号に参加。
この春、第一詩集『疾走光』を思潮社より上梓。

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