熱狂のない時代である
討死のない世の中である
そういう おまえは友を探している
「スティグマを見なかったか?
体の一部に負わされた徴だ」
生き別れた友は
尺八を吹いていたかもしれず
大なる悲観は大なる楽観に一致する
というのが 口癖だったかもしれない
ハラキリの
かなしき 呻吟を聴け
敵手のいない時代にあって
どこかに死を見出さずにおれない人間が
苦し紛れに自らを危めた ハラキリの
かなしき 呻吟を聴け
おまえは聴いただろう
駅の歩廊に潜む声を
推し量れない
悩ましき絶命の一瞬の呼気を
やむにやまれぬ思いで
行き着くところ
死の礼讃へ向わしめる
あの飽くなき憧れの嬌声を
そして 友がこう呟いたのを
私が愛するものを世界は愛さない
私が訊きたいことを世界は教えない
私が見たいものを世界ははぐらかす
たしかに 詩人は嫌われ者だが
世界の語らないものを語り
世界が果たさないものを果たし
世界が知り得ないものを知り
世界が許さないものを許し
世界が葬らないものを葬る
わかりやすいものだ 詩人は
友の言葉を
脳裏で焼き直しては
今日も おまえは
友を探しにノドへ向かう
詩人、ノドへ
國米隆弘















