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あめをんな 三十四

及川俊哉



あめを浴びたいわ。
積乱雲の下に潜り込んで。
滝のようなあめを浴びたいわ。
髪をつたい流れ落ちるあめが、
またわたしの髪のように見えるわ。
あめが流れ落ちる。
わたしの髪が街に、森に、満ちる。

あめを浴びたいわ。
空想を止めたいから、
服が濡れるのもかまわずに。
服が重くなり、
体が冷たくなって、
ひびわれた蜜が更新される。
山肌に縞の模様が吹き付けている。
よほどあまあしが強いのだろう。

あめを浴びたいわ。
あめのようにうたいたい。
いなづまのようにひかりたい。
産まれたばかりの嬰児のように、
濡れながらなきわめきたい。
穀粒をしがむようにして、
わたしはわたしを更新する。
わたしはなきわめく。
あめは、うたいつづける。

ひらめくものがくうかんをさいたからやんだのだせかいが。
しずまりかえるそくどのなかにみなぎるものがある。
さけんだのだきょくてんが。
つばさにうたれるためにこのせかいはそんざいする。

あめを浴びたいわ。
あめのなかで、
ぴょんぴょんとはねる。
あめと同じ速度で地面に落ちてくるとき、
あまつぶはとまってみえる。
せかいじゅうが、無数のビーズで荘厳される。
わたしは、あめをんな。
わたしも、ひとつぶのあまつぶ。
せかいをかたちづくる、透明なビーズのひとつぶ。

あめを浴びたいわ、
あめを浴びたいわ。
わたしは、あめをんな。



及川 俊哉(おいかわ しゅんや)
1975年岩手県生まれ。現在は福島県在住。
2005年、12月23日、は東京駅「銀の鈴」前で突如として「ウルトラ」2代目編集長に任命され、現在に至る。
2009年 詩集『ハワイアン弁財天』(思潮社)発表。

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