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安保、踊れ。安保。サンダンス。 三十三

及川俊哉



擬態社会だからだ。
擬態をとったまま、擬態が解除不能になり、死ぬ場合がある。
または、擬態の維持自体が目的化したために、支障を来す場合もある。
擬態を剥ぎ取れ。
いま、この場で。

内言が身体から漏れ出ている人たち。
不満と、愚痴と、退屈と、孤独が、
ぱんぱんになった膿がはじけるようにして、
体の外に湧き出ている。
見えないのだろうか?
その膿のにおいを嗅いで、
多くの体のない人たちがやってきている。
どこからやってくるのだろう?
体のない人たちは、狡い。
自分たちに体がないことを、
うまく活用しながら、どんな場所にでもねじ込んでくるくせに、
そのことを指摘すると、
あたかもそんなことはないかのように、
「体のない人間なんかいるものか、お前はおかしいんだ。」
と、言いつのる。
内言が身体から漏れ出ている人たち。
不満と、愚痴と、退屈と、孤独が、
ぱんぱんになった膿がはじけるようにして、
体の外に湧き出ている。
見えないのだろうか?
その膿のにおいを嗅いで、
多くの体のない人たちがやってきている。

迷彩服の模様を最初に開発したのは、ナチスの科学者です。
第二次大戦後、アメリカがその技術理論を継承し、
自国の軍隊の制服に採用しました。
ベトナム戦争で効果が確認されたことから、
世界中の軍隊で採用されるようになりました。
迷彩服の記号効果は、とても不思議な逆説を生みます。
記号効果が発揮されたとき、迷彩服の柄は視認されません。
つまり、記号の意味が認識されたとき、
その記号の存在は認識されないのです。
通信の成功が発信者を不在にするのです。

膿を出しているでしょ?
だしてませんよ。だしてません。
膿が出てるから拭いた方がいいよ。
膿なんか出てないったら。あんたなに言ってんの?
頭おかしいんじゃないの?

あなた体がない人でしょ?
体がない人なんかいないでしょ?
世の中に体がない人がいるなんて信じているのはあなただけだよ。
あなた、しゅうきょうでもやってるの?
でなきゃ、頭おかしいんじゃないの?

自分しか大事じゃなくなっているのに、
自分の内言で自分をずたぼろにしているのに、
自分や家族のことを軽蔑しきっているのに、
自分のことがまだすてられないでいる。

すてっちまいな。
ほら、その握りしめているものをすてっちまいなよ。

ないない。
ないないしようね。

未来が降ってくる。
未来が世界を濡らす。
未来を、供養する。
未来は、私たちの祈りによって、
浮かび。
宙に浮かび上がる。
炸裂し、飛び散る未来の飛沫。
柱状に林立する。
垂れ込める未来。
未来が、気圏の一点を食い破り、
惑星の重力を振り切って、ラグランジュポイントに雪崩れこむ。
未来が、球体の微小惑星として、
虚空の一点を占めるようになった。

あー、よかった。
よかったね。
サンダンス。

サンダンス、胸に刃きらめいて。
身をすてて、
自分をすてて、
踊る。
ぶっちぎれる肉のひとひら。

ほら、これをやるからさ。
そっちのぼろぼろなのは、
ないないしようね。

痙攣する人間の側で繭を紡いでいる太い芋虫。
複眼が全てみっしりと集まった人間の指になっている。
その指先が全て虚空に文字を書き付け微笑している。

通信の成功が不在にするのです。
通信の成功が不在にするのです。
通信の成功が不在にするのです。
通信の成功が不在にするのです。
通信の成功が不在にするのです。
通信の成功が不在にするのです。
通信の成功が不在にするのです。
通信の成功が不在にするのです。

警戒しろ、警戒しろ。
お前たちの安全は保障されているか?
お前達の擬態の安全は保障されているのか?



及川 俊哉(おいかわ しゅんや)
1975年岩手県生まれ。現在は福島県在住。
2005年、12月23日、は東京駅「銀の鈴」前で突如として「ウルトラ」2代目編集長に任命され、現在に至る。
2009年 詩集『ハワイアン弁財天』(思潮社)発表。

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4 コメント “安保、踊れ。安保。サンダンス。 三十三”

  1. [...] This post was mentioned on Twitter by ルーコ, M31. M31 said: 六本木詩人会に詩を掲載していただきました(^0^)よかったら読んでね。どぞどぞ。「安保、踊れ。安保。サンダンス。 三十三」ht [...]

  2. 軍人の性を考えてしまいました・・・

    「三十一地の声を聴く」読売新聞の記事、読みました!
    切りぬいてノートに挟んであります。
    分かりやすい書き方で好感がもてました。
    最後の一連「心の声は聞かない」が決まっています。
    余韻として響き渡ります。

  3. PS軍人は「破壊の生産」なのですね・・・

  4. 及川俊哉 より:

    感想ありがとうございます。
    新聞ということでわかりやすくなるようにがんばりました。
    次の「現代詩手帖」にも作品が掲載されますのでよろしくお願いします(^^)

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