港の町の全てが影絵のように見えていた夜
どんな汽笛の音が聞こえていただろう
明日、……そうだね、……という声の囁かれる窓からは一つの明かりも洩れずに
町一体が、悲しいでもない、嬉しいでもない、そういった感情の状態からは切り離されて
もう いつも……こうやって いつ頃からだろうか
子どもさえも おとなも 皆遊ぶ術を忘れた
町には 人形とか 玩具とか がらくたがたくさん転がって そういう全てが影絵に包まれていくまで
この港に入って来る船もなく
誰もがなくしていく大切なものに別れを告げる言葉もなく
行き交うものは少しずつ影絵になっていって やがて
港の町の全てが影絵として見えていた夜
どんな汽笛の音が聞こえていただろう
次に光がさしかかるとき
もうこの町には誰もいない
何もない
それでよかった
行く先のわからない船が何処か遠いところへ
乗せていってくれる
一面の海を見ながら
とても
風が
風が、……
港の町の全てが影絵のように見えていた夜
今唯ケンタロウ









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影絵のような世の中ですね。
そのことが、不安であることをすら立ち止まって
考えることも振り返ることもかなわないわたしたちのために
この詩はある、そんな気がしました。