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港の町の全てが影絵のように見えていた夜

今唯ケンタロウ



港の町の全てが影絵のように見えていた夜
どんな汽笛の音が聞こえていただろう
明日、……そうだね、……という声の囁かれる窓からは一つの明かりも洩れずに
町一体が、悲しいでもない、嬉しいでもない、そういった感情の状態からは切り離されて
もう いつも……こうやって いつ頃からだろうか
子どもさえも おとなも 皆遊ぶ術を忘れた
町には 人形とか 玩具とか がらくたがたくさん転がって そういう全てが影絵に包まれていくまで
この港に入って来る船もなく
誰もがなくしていく大切なものに別れを告げる言葉もなく
行き交うものは少しずつ影絵になっていって やがて
港の町の全てが影絵として見えていた夜
どんな汽笛の音が聞こえていただろう
次に光がさしかかるとき
もうこの町には誰もいない
何もない
それでよかった
行く先のわからない船が何処か遠いところへ
乗せていってくれる
一面の海を見ながら
とても
風が
風が、……

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今唯 ケンタロウ(いまゆい けんたろう)

1980年 9月生まれ。三重在住。
2005年から2008年迄、四日市にある子どもの本専門店メリーゴーランドの童話塾に在籍。
文芸雑誌「ユリイカ」への投稿を経て、2009年、辻井喬氏により【ユリイカの新人】に選出。
その後、クリエイティブRPG『蒼空のフロンティア』にシナリオライターの一人として参加、
一方で、リトルプレス「隔月刊 ミルチァン」を主宰し、地元の書店から東京のタコシェ、模索舎等に展開中。
URL:http://www.geocities.jp/ima_yui/


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1 コメント “港の町の全てが影絵のように見えていた夜”

  1. Chiave より:

    影絵のような世の中ですね。
    そのことが、不安であることをすら立ち止まって
    考えることも振り返ることもかなわないわたしたちのために
    この詩はある、そんな気がしました。

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