ありふれたものはいつもあるものではありません
ジェーン・ハーシュフィールド
ありふれたものはいつもあるものではありません。
ときには老人に 耳の聴こえがもどってきたりするように。
くっきりした階段の輪郭がもどってきます
何十年も聞こえなかった渡り鳥たちの声が耳へもどってきます。
みなどこにいたのでしょう。どこを通ってもどってきたのでしょう。
何年もおしだまっていた女の人が
死ぬまえに完璧な一文を口にします。
辛らつな若者が飽きあきします
いま彼の内にいるのはあわれみぶかい老人
彼の顔からは自分の選択を悔やんでいる様子は見えません。
ありふれたものはいつもあるものではありません とその日がくりかえします
それだけがその一日がさしだせるもの
とらえようのない望みでも、物語の慰めでもありません。
例外があることを忘れぬための ただの覚書です。
(ジェーン・ハーシュフィールドの詩「ありふれたものはいつもあるものではありません」(What Is Usual Is Not What Is Always)を拙訳で紹介させていただいた。この作品は、2006年に出版された彼女の第六詩集『アフター』(After)に収められている――山内記)















