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花嫁の鬣

竹浪明


浮いた噂がたちまち広まるように
春の気配はそこここに漂い出す。
雪解けの泥にまみれた太陽が
透き通る小川でおもてを洗う。
やがて艶やかな鬣は
光と風と水と大地を混ぜ合わせる。
花々はファンファーレを鳴らし
春の鬣が舞う。
うずくものたちは皆
金色の鬣の端に願いを掛ける。
確かな光に導かれ
ダンスのパートナーと巡り合えるよう。
猛るルーレットに
振り落とされないよう。

春闌皆それぞれに鬣を纏う。
浮いた噂を自ら流すように
孔雀の扇が瑠璃の薫りを振り撒く。
恋のルーレットに賭けて
正当な幸運を得たひと組が
その喜びを鐘の響きに乗せる。
純白のヴェールの鬣が
深紅のカーペットから花吹雪の中を進む。
隠された髪の一本一本の先には
思い出の数のアクセサリー
夜の数のキャンドル
夢の数のオルゴールの鍵が結ばれている。
鬣は豊かに膨らみ
どんな夏が来ようと怖れない。



竹浪 明 (たけなみ あきら)
http://takenamiakira.jp
映像作家・文筆家・東京造形大学映画専攻非常勤講師。
「蘭賞」(俳句)、「平間至写真賞優秀賞」「文芸社ビジュアルアート社長賞」他受賞。
俳句×写真集『恐竜×ヴィーナス=17文字』(文芸社)、 写真集『象と大樹と子供たち』(角川学芸出版・収録写真によるTシャツが「赤十字グッズ」に)他。
監督映画『のら暦*ねこ休みネコ遊ビ*』(UPLINK)他。

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