春²
川島清
四種類の枠から入る光と風景
ときどきデザイン化されたツァラーツーストラや
色がバラバラになった人間も枠を乗り越えてくるけれども
赤と青が独立した彼と話をするとき
人という「流線形の容器」に詰まる砂が
時計のように崩れてしまい
そこにあいた穴に耳を押し当てる
すると
耳のおくから虹が生まれ鼻のなかを彩り
網膜にある 逆さの<窓の空>へ架かる
四種類の窓が煮える
チョムスキーを読みながら
トウモロコシの黄色の生き方をまねていたら
白い狼たちが牙を
波うっている緑から搾られて
顔中花粉だらけの蝶が
「金の実」のように落ちてくる姿は
いま
〝初め〟が歩いている
















本来、語りえないものを既存の言葉で述べてみても、新たなものは見えてこない。彼は心の動きを述べるのに当たり前の言葉を躊躇なくはぎ取って、春の言葉くっつけた。チョムスキーの内容まで、トウモロコシの実の羅列としてしまった。オオカミの吠える声に恐怖することもあるし、高きに登った蝶が墜落することもある。春、春、春である。色彩豊かな春の心象風景が,珠に映っている。これはいい。