眠り
ジェーン・ハーシュフィールド
馬は 眠ります
犬なら とりわけ老犬
もちろん人も
木でさえも
惑星、原子は眠りません
バクテリアやウィルスは?
眠りそうもありません
ペンは眠っています
たいていのときは。
でもすぐに目覚めます
一振りするか
すこし試し書きすれば十分
炎は闇のそばで眠ります
猫は陽だまりのそばで
一匹ずつまるくなり 暖かい輪を描いています
岩はたたずんだり 転がったりします
でも眠れません
羊毛は
羊と一緒に眠るでしょうか?
蹄は
牝牛と?
指は眠ります
けれども指輪は眠りません――
それなら誓いは?
男に触れられた女は
ときには 眠っている
ふりをします
そうすれば彼に 自分の目覚めを
想像させてあげることを楽しめるから
その後は、女の腿は
前とはちがう眠りかたで眠ります
ときには心が
何年も眠らなかったり眠ったりすることもあります
ときには精神も。
わたしは眠りに
語りかけ 礼儀正しく
こうしてくださいああしてください と頼みました
でも眠りは目をそむけるだけ
「向こうへお行き」
「かまわないでおくれ」などと言います
まるでわたしなどいなくても
ちゃんと存在できるみたい
けれども、それは知っているのです
だれが奴隷で だれが主人か
だからわたしはたっぷり眠りに貢ぎます
カモの羽毛 やわらかな綿
砂糖入りのミルク
それともワイン
ほんのすこしだけ窓をあけてやり
あたたかな毛布に眠りをくるんであげます
眠りに入ることについて
人は語ります
でも眠りこそわたしたちに入ってくるのです
まるで経験豊かな、堂々とした
農夫が畑に入るように
毎晩それが耕し 水で潤してくれるので
わたしたちは目覚めるときに
上機嫌なこともあれば
わけもわからないのに悲しいこともあります
だから 眠るのをいやがる
子供をなだめようがないのも
たぶん無理はありません
まだ起きてたいの と女の子は言い
クマのぬいぐるみを頬にあてています――
でも最後にはその子も受け入れるのです
しずかなカササギ
かたい殻の巻貝 サボテンの仲間になり
身を揺するシカ
ただようヨウジウオ
ふかいためいきをつくカエデの仲間になり――
みなが ただよいながら
かなたをめぐりつつ
生ける者たちがまどろむ夜の歌を キルト仕立てに縫いあげます。
(ジェーン・ハーシュフィールドの詩「眠り」(Sleep)を拙訳で紹介させていただいた。この作品は、2001年に出版された彼女の第五詩集『砂糖をたされ、塩をたされて』(Given Sugar, Given Salt)に収められている――山内記)















