まっ白な廊下。窓も扉もない、ただ延々とつづくそこに、大小様々のピエロがこれもどこからどこまでということなく、果てしなく並んでいる。雑貨のようなものから人形のようなものまで、彩鮮やか。そのすべてのピエロが、突然影絵のように真っ黒になったり、かと思ったらまた色付いたり、といった不可思議な点滅を不規則に繰り返している。ただ、そればかりである。
その空間に、ラッパらしいピーとかプーとかいうとんでもない音がでたらめに鳴り響いている。これもまったく不規則で、何かの現代音楽なのかしらと思うが、鳴り止むことなく、いつまでも鳴りつづくばかり。まったくやかましいことで、頭がおかしくなりそうである。
どうしようもないので、このきちがいじみた回廊を、歩いていく。いや、そもそも、わたしは今までもここを歩いてきたのだろう。どこから……振り返ってみても果てることない回廊。戻るも進むも同じようである。わたしは歩いていく。点滅するピエロ、意味不明の現代音楽。一度立ち止まり、ピエロの一体を持ち上げてみるが、ピエロが音を奏でているわけでもなし。どれもただの人形か雑貨にすぎない。わたしは歩く。
歩いていくと、進行方向の方から、何か来る。わたしも進んでいく。点ほどだったのが、徐々に近付き、それは子どもの背丈ほどの、カタカタと太鼓を鳴らすまるで昭和レトロなオモチャである。ゼンマイ仕掛けのお猿で、無言、無表情なつぶらな瞳、カタカタカタカタ太鼓を鳴らし、やって来る。そのままわたしを行き過ぎ、進んでいってしまった。
相も変わらず、白い廊下にピエロと音。
しばらく進むと、また何か来る。同じである。カタカタ、カタカタ、太鼓を鳴らす、レトロな今度は兎のオモチャ。
思えば、先ほどもそうだったが、こいつはこいつで音を鳴らしている。確かに、カタカタいう太鼓の音が聞こえているではないか。
そう思うと、その音だけは妙にリアルで、またそう思うと更に、今まで周囲で鳴っていたどこで聴こえているのかわからないラッパの音は、わたしの幻聴なのか実際どこで鳴っているものなのかよくわからない不確かものとなり、幾分音量も小さくなったようである。
わたしは、わたしを通りすぎようとしていたレトロの兎をぽんと殴って破壊してみる。兎はかたんとその場に崩れ落ちた。カタ……。
すべての音が止まった。
ピエロの点滅も止まっている。
見ると、ピエロは色鮮やかでも逆に真っ黒の影絵でもなく、ただの化石である。
雨が降ってくる。
化石は、雨にとけて、流れてしまった。
何もない。白い空間に、ただ、雨が降るばかり。雨が降るばかりである。
ピエロ回廊
今唯ケンタロウ















