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雪もやさしき

黒瀬珂瀾


少年のごとくあかあかと古九谷の壷の兎は染められてあり

もういい、とばかりに朝のおほ雪は一位をたわめしずかなりけり

雪まとふ乞児ほがひの指に白銅を乗すれば門にいやするあはれ

きさらぎは輝く塵が耳を訪ひ「吾はレギオン、数多なるゆゑ」

喉笛を白刃すべりそののちを天花粉ふるマナのごとしも

ひかりこそ寒さの極み 冬の日に購ふ白百合をゆびさきつたふ

わが眠る地下鉄の窓を打つみぞれ滅びたければ滅べひとりで

鯛の身の白きを包む荒塩を割りえぬなれをかたはらに置く

大いなる酒飲みボリス.エリツィンの赤ら顔さびし夜の雪なれば

積もりゆく「いな」とし言へど釘宮の声もあづまの雪もやさしき

われよりも国を愛すとこの夜はグラス一つを割らしめしのみ

紅梅のつぼみ堅きを打ち落とし今宵なにゆゑきさままれびと





初出『鱧と水仙』34号(2010年2月)



黒瀬 珂瀾(くろせ からん)

1977年、大阪生まれ。
春日井建に師事。
「白い鳥」、「中部短歌会」を経て、現在、[sai]、「未来」、「鱧と水仙」に参加。
歌集に『黒耀宮』(第11回ながらみ書房出版賞)、『空庭』。歌書に『街角の歌』。
現代歌人協会会員。
http://www.kurosekaran.com/

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