馬車に盛りつけられたエミリーの温かな推移を指でなぞる。百合の頃、城へ向かうその一頁一頁を並べ据えるペンに先んじて滴るエミリーの面影にもたれ、大きく鞭を入れた遠ざかる鳥影が擦れるように。跡には釈明の種子が残り、一粒一粒を黒くうねる畝に投げ入れるエミリーの髪は酵母を含んで。
おなら うんち おまる おちんちん 地獄
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ナイフとフォークを操る老いさらばえた屋敷に宿りする家長の幽霊は睫に乞いエミリーは匂い立つ。狭い格子に月が挑み風が雲間に砕き或いは逼塞する。ヒステリックに息を刻み水を忌むがごとくに毛羽立つ。否、実際には水を忌み己の閨に蟠った雲脂ばかりを水葬へと送り展べている。小川が分泌されている。
おなら うんち おまる おちんちん 地獄
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噎せ返る果実の大地から葉脈が落ちる。脈打つ顳顬は筋を伸ばしその速度に追いつこうとするが、エミリーの掌で創が季節の芽吹きを待機している。滋養を含んだ深さは充分にその爛れを想起させるが、エミリーは腐乱の類を期待しているわけではない。むしろ爛熟の階に澱む収穫の頽廃を呪っているのだ。
おなら うんち おまる おちんちん 地獄
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川面から澱み煮凝る発酵物は水面から逆さに根を張り、鷲掴む姿でエミリーを覆いはじめる。いつしか遠ざかっていた鳥が橋の欄干で羽を休め、その充分に忍耐した糞が川底を埋め尽くす季節にエミリーは殺意への途上にあったというのに。やがて節くれ立った手に包まれ視界を遮られる軋みの最中へ向かう。
おなら うんち おまる おちんちん 地獄
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打ち上げられた濡れ髪に憩う暫しのエミリー、エミリー。捥いだ唇の黒に今しもその名は逃亡している、蒔かれたものらが幾度となく言祝ぐその名に連なるという逃亡をしている。やがて譫言は止み深々と幽閉に委ねその眼差しが儚んでいる花弁は鮮やかに厚みを帯び新たに立ち上がる笛の名はエミリー、エミリー。
(未発表旧作 07.11)
エミリー、エミリー
高塚謙太郎
高塚 謙太郎(たかつか けんたろう)
1974年、ブラジル・サンパウロ生まれ
大阪在住
「詩学」「現代詩手帖」「ユリイカ」投稿欄を経て現在にいたる
第1詩集『さよならニッポン』(思潮社)
詩誌「ウルトラ」同人
ネット詩誌「四囲(she)」同人
個人詩誌「厩」主宰









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