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「叙述日」

小野絵里華


思い出を食べて生きていました。
空腹すぎてそらに溶けました。
問題が解けなくて回想用紙を持ち帰りました。
だからひざこぞうを擦りむいて血を流しました。

一緒に帰ろうと言ってから、150日過ぎました。
(正確には150日と+アルファでしたけど)
あの子の帰りを待っていました。
あの子は本物のばかものでした。

上演時刻のために急いで駆けていきました。
日曜日の出来事でした。
あんまり一人で外出しないように、
一人で外出ばかりしているあの子に怒られました。
(時事問題は苦手です)

光合成をさぼりました。
だから返却期限もすぎました。
回想用紙はまだ白紙でした。
(正しい解答が分かりませんから)
もう一度パンを食べました。
(バターよりはチーズが好きです)

ゆうがた
全く明けないゆうがたのねむり
きのうの悲しげな食パンを思い出しながら
毛布に包まって死んでみました。
二日で五ミリ太ったので
あの子の横顔もふやけました。

回答が見つかりませんでした。
上演時刻も逃しました。
もうとっくに枯れてしまった庭のはなしの中で
にわにはにわにわとりがいる
空腹な病人が笑いました。
いやらしい笑いでした。



小野 絵里華(おの えりか)

1984年東京都生まれ
2010年ユリイカの新人(伊藤比呂美・選)

主要論文
「〈日本身体〉の変容―萩原朔太郎を中心に」(「詩人会議」2007年7月号)
「安岡章太郎の短編小説「ガラスの靴」考―透明な物語に埋め込まれた権威・屈辱・〈公〉のモチーフについて」(「言語情報科学」紀要、2010年)

共著
『1Q84スタディーズBOOK2』(小森陽一編・若草書房・2010年)
―「〈王権〉はくりかえされる―『1Q84』における〈性〉と〈血〉をめぐって」

小野絵里華ブログ「詩人は死んだ魚の目をもって」http://erikaono.exblog.jp/

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