闇にひれ伏し
ハイエナのように生きたいか
光に撃たれ
孤児のように死にたいか
無言で問われ続けていたために
黙ることを覚えた
孤独は舌を噛むほどつらいときにだけ
わたしを守る武器となった
テロリストの兄たちは
エンジェルとわたしを呼ぶようになる
ときどき兄たちを護衛して
いくさに出かけた
翼は破れ血が流れたが
兄たちはいたわるということがなかった
〈おまえがついて来たんだろうが〉
と言っていた
いくさの最中にも
わたしに対してははにかんでいるような目で
兄たちは常にわたしの自立を促した
兄たちは強く
兄たちは複数で
単数だった
わたしを愛さない者の数は
八人でも一人でも同じことなのだった
どうしてエンジェルをやめられないのか
考えることがある
そのときいつも思うのだった
〈僕らにはこういう愛し方しかできなくてね〉
兄たちの伏し目がちな目が
次の戦いの作戦を立てながら
わたしを見ていたことを
その木漏れ陽の下の時間を
その尊さを
森が傷つく者を幽閉し
鳥に変えるといううわさが立った
わたしもそれだろうか
しかしわたしは鳥ではない
この翼はエンジェルの翼だ
秋が暮れかけた頃翼を研ぎ
いくさに備えた
わたしは光の波動を操り
時のしじまをずらすことしかできなかったが
この翼が役立つことがあった
〈僕たちを守るためにそれを使ってくれ〉
とは兄たちは一言も言わなかった
そのようなことはわたし一人で決める
月夜の晩に祈りながら
わたしは生きられるでしょうか
大丈夫でしょうか
またいくさから戻って来られるでしょうかと
幸福は針葉樹のように
わたしのそばに立っていた
おまえを刺すぞと言っているのか
わたしの護衛であるのかの
どちらかであるに違いない
エンジェルですと言って寝た
(「POETICA」61号より)
傘下
渡辺めぐみ
渡辺 めぐみ(わたなべ めぐみ)
東京生まれ。
第一詩集『ベイ・アン』(二〇〇一年、土曜美術社出版販売)収録の一篇で第十一回詩と思想新人賞受賞。
第二詩集『光の果て』(二〇〇六年、思潮社)で萩原朔太郎生誕一二〇年記念・前橋文学館賞受賞。
第三詩集『内在地』(2010年、思潮社)で第21回日本詩人クラブ新人賞受賞。
今年度より世田谷文学賞選考委員。















