枕
ジェーン・ハーシュフィールド
綿毛や羽毛が
縞模様の綿カバーに入っている枕もあれば
ウールやドライハーブの花が入っている枕もあるし
想いが入っている枕もあります。
たとえば、ランチバッグに入った
おいしいサンドイッチのこと――
プロヴォローネのスライスにガーデントマト
ディジョンマスタードとマヨネーズを少々 それを想えば枕になります。
それは人を癒してくれます まるで存在の記憶のように
ほんの一瞬だけ
自分が人間であるということに あまりとまどわずにすみます。
たとえば、牛や馬の
いばってもいなければへりくだってもいない
まなざしに出会えること ニンジンを
罪滅ぼしでも賄賂でもなく、単純な友情を示すためにさしだせること。
友情は単純なこともあります
ちょうどドアのうえの然るべき場所に置かれた
幸運を呼ぶ蹄鉄の弧が枕であるように。
「ここにいるわよ」 死が近づいている友人にわたしはそう言いました。
「ここにいるよ」 彼はそう答えました。
それからもうすこし話をしましたが
あとはおたがいに聞くことなどありませんでした。
言葉は 川の小石のように黒いものもあれば白いものもあったので
ハンカチを結んでつくった袋にくるみました。
わたしにはそれを飲みこむことができなかったので
その晩 枕のしたに置きました
そして落胆もせず、寝返りもうたずに
よく眠りました
彼は死につつあったのに わたしは生き続けていたのに。
あのころの彼のまなざし――それは水のように純粋で
刻一刻とすすむ肉体の崩壊にも損なわれていませんでした。
ほんのすこし貪欲でしたが、もう準備も覚悟もできていました。
彼は言いました 何が起ころうと、それが自分の運命なのだと。
わたしたちは一度握手すると
それから一緒におたがいの手を離して
一緒にそれぞれがすべきことへと向かいました
まるで一人の人間の
二つの手が毛布と枕を整えるように。
一日の形を整えながら明日へと歩み入る準備をするために
ちょうど眠る前にそうするように。
(ジェーン・ハーシュフィールドの詩「枕」(Pillow)を拙訳で紹介させていただいた。原詩は、2001年に出版された彼女の第五詩集『砂糖をたされ、塩をたされて』(Given Sugar, Given Salt)所収。16-17行目は、馬の蹄鉄を壁等に飾る西洋の習慣を踏まえている。幸運が漏れ落ちないよう、蹄鉄は開口部を上向きにして据え付けられる――山内記)















