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世界モニタ

水無田気流

うまれるぼくらはうまれるまえに
うまれることをまなびます
ぼくらがでかける世界のことを
うまれるまえにまなべるのです
うらやましいとままはいいます
さいしんてくのろじ・のおかげ
だそうです

すでにそうちゃくされているのは
とーめーかへんぷらすちっく・の
世界モニタ
これで世界をながめます
これで世界をまなびます

うまれるぼくらはうまれるまえに
うまれることをしっています
いないばしょからいるばしょへ
ぼくらははしっていくのです
なまの世界はからだにわるい
だからモニタをそうちゃくします
おめめがつぶれてしまわぬように
よけいなものをみつめぬように

世界はとてもひろいので
まよわぬようにまどわぬように
ぼくらはモニタをそうちゃくします
しかいとしこうがちょっけつするので
ぼくらはとてもあんしんです
うらやましいとぱぱはいいます
ひつようなことをひつようなだけ
しっていくのはすばらしいです

うまれるぼくらはうまれるまえに
うまれることをみつめます
きのうもあしたもおとといも
くらくらしながらみつめます
いちぜろきざみのにちじょうは
すでにふつーにはじまっています

うまれるぼくらはうまれるまえに
すでにうまれているのですから
世界はみえているようにだけ
みていればそれはただしいのだと
そーらーぶっくはおしえます

ぼくらは
うまれるまえにじゅうぶんうまれ
うまれてからもおなじせーかつ
うまれるまえとあとの世界に
なんらかわりはないのですから
いるばしょからいないばしょへ
はしっていきますおなじ世界で

ところで
どうじつじゅたいはっせいの
こーどぜろはちいちさんくんが
うまれるまえにうまれることを
きょひしてしょーきょされました

うまれるまえにうまれることを
じゅうぶんまなんできえていくことは
ふつーのことになりました
ふつーのことでぼくたちは
ふつーにみんなでみおくりました
ふつーのことしか世界にはなく

ふつーのぼくらはうまれるまえに
うまれることを
とてもふつーに、しっています



初出『現代詩手帖』2009年11月号、連載詩「FULL L(ふるえる)」より

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水無田 気流(みなした きりう)
1970、神奈川県生まれ。早稲田大学大学院社会科学研究科博士後期課程単位取得満期退学。
現在、東京工業大学世界文明センター・フェロー。
2006年、第1詩集『音速平和』(2005年、思潮社)で第11回中原中也賞受賞。
2008年、第2詩集『Z境』(2008年、思潮社)で第49回晩翠賞受賞。
評論に『黒山もこもこ、抜けたら荒野 デフレ世代の憂鬱と希望』(2008年、光文社新書)。
URL:http://blue.sakura.ne.jp/~intermezzo

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