ひめやかに森は繁茂している
甘ったるい吐息を漏らして
雑木の背筋を愛撫して
花弁に露を湿らせて
しな垂れた小枝は震え
針さながらの尖端の叢を掻き分けて
暗い穴に共食いの残骸
大量の死骸
黄金の粘液が地上を
鮮明に犯し
青紫の鳥はその嘴で啜る
幾層にも重なる多彩な色を広げて
樹上に響き渡る声を鎮めて
息を潜め
したたかな沈黙に青ざめて
隠れたる球体に罅が入る
事象の移ろいのなかで
眠れる喪失へ
ある形容しがたい
かのものは渦を巻いて
土で造られた首を締め付け
青錆の身体に蛇を絡ませ
虚飾と欺瞞を飼い慣らし
おまえたちから遠ざかる
眼に映ることのない
まどろみのなかで
戦火に躍る人形はせせら笑い
向こう側に映る影法師は
一指も触れられぬ
月桂の輪を縫いつけ
おまえたちの頭上を滑空する
マグダラ おお、マグダラ!
石打たれるのはマグダラではない
その肢体によって
殺されたのはマグダラではない
刃物を懐に忍ばせたのはマグダラではない
マグダラ
雀を風景の凍結に向かわせたのは
嬰児を水洗便所に流した マグダラ
卵白に塗れて叫びまわる マグダラ
忌まわしい緋色の衣を肌蹴させて
投げ込み寺の無縁仏となる マグダラ
マグダラ
海へ還り 両性具有となる
マグダラ
裏道の木賃宿を渡り歩き
高架下で一夜を明かした マグダラ
マグダラの回想
國米隆弘















