六本木詩人会 六本木詩人会 ホテルアイビス六本木

旗下

渡辺めぐみ

笑いあう花々の上にも
嵐が燃え
月影に
虫の羽を夜風が引いてゆく

死神を抱きしめて
今日を死んでゆく姉は
妹の声を聞かなかった
姉妹一緒に羽の影が途絶えた

虚ろに流れてゆくかすかな雲は
何も見てはいなかった
祈祷師と呼ばれる男が
黙って衣の裾を丹念にはたいている

姉は妹の声を
死んでも捜しているだろう
大切なことを話してはいけません
そう教えたのは姉だった

虫の終わりかたは
虫には決められない
その定めを知っているのも
虫ではない

祈祷師は
王のためにだけ祈るのだ
膝を折るのも
王のためだけだった



(「ポエームTAMA」67号より)

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渡辺 めぐみ(わたなべ めぐみ)
東京生まれ。
第一詩集『ベイ・アン』(二〇〇一年、土曜美術社出版販売)収録の一篇で第十一回詩と思想新人賞受賞。
第二詩集『光の果て』(二〇〇六年、思潮社)で萩原朔太郎生誕一二〇年記念・前橋文学館賞受賞。

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