「雨は不幸な音楽だ」
水性インクが雨ににじんで
動物たちは赤い傘をさして歩く
そう、あの日も雨……
段ボールの中で
ひとりのおばちゃんが
鉛筆で詩を書き写していた
「15才の詩集」という看板のようなものが
段ボールの外側に立てられていた
「ねえ、おばちゃんの人生は……」
「……」
「詩集、下さい」
「ちょうど、1000円だよ」
おばちゃんの「オリジナル」ではなかった
よく見かける詩が
粗末な紙にHBの鉛筆で書かれていた
おばちゃんは「誰か」の詩を
「自分」の詩として売っていたのだ
表紙には
「57才の詩集」と書かれていた
あれから10年
もうおばちゃんはそこにはいない
おばちゃんの詩集
松本秀文
松本 秀文(まつもと ひでふみ)
1979年 12月20日生まれ。いて座。A型。福岡在住。
既刊詩集に『鶴町』、『白紙の街の歌』(ともに思潮社)などがある。
詩の朗読でも地味に活躍中。詩誌「ウルトラ」同人。
ブログ「sokudotaroの日記」時々更新中。http://d.hatena.ne.jp/sokudotaro/















