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円陣、その庭に

高村而葉

大事だと思っていた帽子が飛ばされてから
いろいろな卵を割ってしまった
それから季節が変わって
信じようとしない頬に石が投げられたりもした

動くな! といわれてからその距離を考える間に
冬の千切りをちりちりと炒めてパンにはさむ
サンドウィッチ、乾燥した湿地の庭で
知らぬ間に裂けた背中から流れでる断絶が
腹を鳴かせた、裂けるがまま、そのままで
でも離れることはない
ただならぬ円陣、がっしりとした細腕のカラビナ
いいかい、このまま動くよ、砂みたいに
あと百年ぐらいは投げられた石の波上を
動いてやるさ
これが対立だとしたら凍える、円陣の背後へ
ギィーギィー鳴く自転車の
主張をやさしく踏みつける足のように
その距離に宿泊した一夜
したたかに打ちつけられた足の小指になって
架空の男、架空の女が
黒い石を放り込むがままにしておいた
それから、火吹き男が喋る言葉が燃えるのを見た
溢れかえる砂利は火に照らしだされた
裂けた背中から弁明しない馬が走り去った
光る砂利を踏んで、円陣が次の季節を身篭った
これが和解だとしたら凍える、円陣の中央で
パンにはさんだ冬は唐突に別れを告げる、ゆれる
日の襲撃を待つ顔が波打って
崖の表情で、樹海の表情で
落石がピタリと静止するまでじっくりと眺めた
それは真っ青な顔ではないが、その
ぶつかるとどうしても曲線になってしまう岩を
庭からとり払うことができない




初出「ジャイアントフィールド・ジャイアントブック」

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高村 而葉(たかむら じよう)

大阪市大正区生まれ。
2009年、第47回現代詩手帖賞受賞。


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1 コメント “円陣、その庭に”

  1. ゼットン より:

    円陣とはなんだろう、と思いました。

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