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星の観測

渡辺玄英


おりる駅をまちがえたからね
そ、坂をくだって知らない角を曲がったりして
(自販機でコーラ買ったとき振りかえってみたのうなだれた
そこで見えなくなったり 息を消したりする
靴音(くつおとだけが耳
みみの黄昏のふかいハイイロ
を たどたどしく歩きながら消えて
消えて、それも忘れられて……


昨日(きのうまでは星がきれーで
きみを殺したあとに
満天の星空を思い出していた(ほんま
ころす夢ところされる夢のどっちにぼくらはすべりおちたんだろーか
犯人はコンビニでコピーをして犯行におよんだ
犯人はコンビニでコピーをした犯人だった
コンビニでコピーをされた犯人だった犯人は
今夜は星が見えないけれど、と呟くのだった
満天の星空がきれいだった 空気が澄んでいるからねここは
(ひとさし指たててくちびるにあてんねんで

   われたガラスを ください あげない

いつも1メートル離れたところに
感情はわきあがる からね
ちがう国の映画のように (かれとかのじょ、北西と南東のかど
ユーレイのように立ちすくむ
それだから、ぼくと背後のぼくらは誰からもうけいれられない
この証しを手にいれたなら (いれたなら?
1メートル離れて泣いていなさい声をたてずに
しずかにぼくは犯人を眺めているだろう
きみをころしてしまったひとをユーレイのように

   つめたいかけらを
   口にふくんで
   (クスリ屋さん、さようなら
    さようなら、

どうしてぼくはきみをころしてしまったのだろう、こんなに
(なんでうちあんたをいわしてんやろ、こないに
と考える
長いゲームの果てで、おりる駅をまちがえたから
失うことしか喜びはなかった。得点はいくらも残されていなかった
と、とりあえず言い張る (いいはる
でも、どうして星空が死んだあとに
星の記憶ばかり蘇るのか (クスリ屋さん……

どこにでもひとは横たわる(からね
冬空の下でも落ち葉の下でも
犯人はコピーしてここに捨てられた
(だから探して





初出「九」21号 (2000年1月25日発行)

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渡辺 玄英(わたなべ げんえい)
詩集に『海の上のコンビニ』(思潮社)、『火曜日になったら戦争に行く』(同)、『けるけるとケータイが鳴く』(同)など。
現在、「現代詩手帖」誌にて詩誌月評を連載中。

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1 コメント “星の観測”

  1. Chiave より:

    やさしさを感じましたね。
    そういうものは滅多に感じるものじゃないんだけど。
    あまりウソ偽りのないやさしさを感じました。

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