お 溺れる夜空が耽溺する星空の下で
暮らす街の家々は 明かりが点けられないまま 誰もい
ません ぼ 僕はやっぱり息継ぎが出来ないのです
深夜のプラネタリウムでは鷹が宙返り
するので僕は息継ぎが出来ないのです
僕は夜の空に黒をばらま
くようにして 頭の中を見つめています 美しい剥奪
星の空は嘘だらけである 黒々とした非難 ぼ 僕は
息継ぎが出来ないのです
時間は腕時計を爆発させたまま
激しい向こう側を覗いています 石垣島が石垣島にな
っています 僕は息継ぎが出来ないのです さらに夜空
の夜は終わらないのであります
深夜のプラネタリウムでは鷹が宙返り
するので僕は息継ぎが出来ないのです
鷹が宙返りする 危険が危ない 断崖が 飛び
込んでくる 白地図が 何億枚も燃やされると 滅ぶの
はあの星の僕の頭髪なのかもしれない
鷹よ鷹 宙返りしたまま深夜のプラネタリウムのどこか
直立しているのは縄文式土器
炎と一緒に死ねるのか古代
隣家のプードルは
突如の崖を
飛び越え 浴室で絵の具を噛み殺すのです
ところで世界中の台所の
ストロベリイケエキは
僕以上に僕である 危険が
危ない 花柄の花の奥で摩周湖が溺死する
鷹よ鷹
鷹は鷹
よりも鷹であるのか
星は星
よりも星であるのか
たったいま 危険が危ない
深夜のプラネタリウムでは鷹が宙返り
するので僕は息継ぎが出来ないのです
燃えたまま宇宙を
飛び跳ねている
緑色の地球が シュートされて決勝点となったので
敗北したまま
鷹よ鷹 ぼ 僕はやっぱり息継ぎが出来ないのです
鷹は星に無意味を輝かせたまま 鷹よ鷹
僕は空に 幾つもの崖があることを知った
鷹が豪雨になって
すぐに止んだ 深夜のプラネタリウムでは鷹が四回転するので
危険が危ない
世界は目盛りを失ったまま
牡蠣より深く物思いに沈んでいる
深夜のプラネタリウム
誰もいない阿寒湖が 波立つ ああ
安全が危なくない
鷹よワシ ウグイスよスズメ 僕の心で巨大な山脈がトゲとなり
雲は真っ黒に 血を流す
電信柱が歩いています 街が踊ります 複雑な交差点がプラネタリウムに歩いてきまし
たいつまでも信号の色は赤のまま
夜は
息継ぎが出来ないのです 燃え続けている柱時計
を鷲掴みにしたまま 大海を越えていく紛れのない鷹の足がある 地中海の無人の舟で
僕の手のひらが革命を起こす
燃えながら歩いてくる電信柱
季節の傷口に甘い蜜を塗れ
午前二時のプラネタリウム
の不明なる番人の目頭に
黄緑色の絵の具を塗れ
鷹よ 危険は鳥目
鷹よ鷹
また新しい崖が空に転がってきた
狩るべきものは 夜空の出鱈目
鷹よ鷹
宙返りすると
星は消える
途端に
プラネタリウムがもっと夜になる
鷹よ鷹
宙返りすると
おまえは生まれる
刹那に海から鯨が跳ねる
危険が危ない
鷹よ鷹 宙返りすると
空は消失
何も無い 何も無い
電気も無い
深夜のプラネタリウムでは鷹が宙返り
するので僕は息継ぎが出来ないのです
皆無の星
絶無の空
夜の鷹がもっと夜になる
僕は真っ黒い無人である
深夜のプラネタリウムでは
無言が宙返りする
闇は
無意味
最新詩集「黄金少年」(思潮社刊)より
プラネタリウムの最後
和合亮一
和合 亮一(わごう りょういち)
1968年生まれ。
第1詩集「AFTER」で第4回中原中也賞(1999年)、第4詩集「地球頭脳詩篇」で第47回晩翠賞を受賞(2006年)。
読売新聞・日経新聞(夕刊)・ディズニーファミリーサイト等に連載中。









(10 票4.20)





