全身の痣が
虹と掻き消え
眼の血の網が
陽炎と薄れる。
耳の奥から
泥の膿みが流れ出て
淀んでいた脈が
澄んだ水音を立て始めた。
絶え絶えの息が
厖大な痛みと共に引いてゆく。
影はもう踊らない
水気のない器に。
光はもう戯れない
灰と崩れた器に。
移ろう雲が
蒸発した怒りを運び
忘れられた悲しみが
遠く泉に湧いている。
水の柩の蓋は
いつでも開いている。
誤りと過ちの違いを
誰も判らず
継がれる記憶と
途絶える思いを誰も択べない。
川に小石を投げる少年は
見える痣を数えない。
見えない傷を口にしない。
川面を跳ねるつぶてのように
ただ息を弾ませた。
川が石ころの涙を飲んだ。
水の柩
竹浪明
竹浪 明 (たけなみ あきら)
http://takenamiakira.jp
映像作家・文筆家・東京造形大学映画専攻非常勤講師。
「蘭賞」(俳句)、「平間至写真賞優秀賞」「文芸社ビジュアルアート社長賞」他受賞。
俳句×写真集『恐竜×ヴィーナス=17文字』(文芸社)、 写真集『象と大樹と子供たち』(角川学芸出版・収録写真によるTシャツが「赤十字グッズ」に)他。
監督映画『のら暦*ねこ休みネコ遊ビ*』(UPLINK)他。















