やけに、青に溶け込んだ街並みだ。
何処だろう。
人魚の町でも、空の果ての天使達の町でもなかろう、タバコだとか小物を売っている店、食器、金具、傘など置いてある店、玩具、駄菓子屋のような店もある。
どれにある文字も読み取れない。知らない言葉なのか……(この青い、空気のせいだろうか?)近づいてみても、どれも看板や、それの書いてある物にぼうやりとにじんだように見え、判別できない。
……懐かしい思いにさえとらわれそうになる街歩き、だけども、ここはどうにも異国だ。
どこもかしこも青い。
手をかざしてみる、わたしの手も青い。
ときおり、そのなかにあって、濃い黄の電燈が、空を照らしている。それはとても高い空なので、小さな月か、なにかの星のようにも見える。
灯かりと空とのあわいを見ていると、その周りだけ青が散って見えるので、この深い青は霧なのだとも思えてくる。
すべての物音が0だ。
動くものもない。
おかしなふうのどうぶつがにやついて店先で手招いていたり、しおれてわからないフルーツが幾種も軒先にぶら下がっていたり、老婆のような腰の曲った影が戸に染み付いていたり、骨のような砂利のようながりがりいうものを踏みつけて歩く古めかしい道だ…… ……
ふしぎなことだけど、ひとつ角をまがれば、にぎやかなパレードに出会いそうな気に満ち溢れているのだが、はて、それはどこの曲り角だか…… ……
*
(フーフーピーピ ガンピシャカッピリャー
フーフピピーリリャ ガラトシャガラトシャ
フーフーピーヒャカ トンドントンドン……
(ああ。どこの角から、聞こえてくるやら……
*
いつしか、青はますます濃さを増し、街はもう影絵のようになっている。
空に点点とともっていたまっ黄色い灯かりは、今は円を描き、それは……観覧車だ。高い高い、影の塔の頂に聳えている。
いつだろうか……たくさんのパレードが、この道を通って、あそこまで行ったのだな。さぞステキなことだったろうに。
わたしはさびしくて、ひとりで、ラッパでも吹きたいこころもちで。
曲がり角なんてなかった。わたしはずっとこの道を来た。ひとつ路地を折れれば、過去のパレードが見られると思っていたけど。それがまぼろしでも。それがまぼろしでも。それがまぼろしでも…… ……
*
巨大な、聳え立つ建物へと入る。
ここでは、チラリ、ホラリと、人すがたが見える。
右手には、喫茶だろうか。この建物のなかでは、青は薄れ、わずかにすべての物に褪せた色がついている。幾らか距離を置いてすれ違っていく人の顔は、影になってよく見えない。皆、ぼんやりとぼやけた同じふうな服に身をつつんでいる。
喫茶を横切ると、かすかなコーヒーのにおい。
真ん中に、エレベータを有する大きな柱状の一角があり、これが塔の支えのようでもある。エレベータは、待っても、降りてくるようすがない。機能していないのだろう……
左手は、細まって道がぐるりと、柱の裏の奥の方へと廻り込んでいる。
そのまま、とても細い階段を延々あがって行く。
どこまで来たのか、あんなに暗くてぼやけていたような空気が、きゅうにかろやかになってきて、あたりはしろくなってきた。窓などまったくないのに、どこかから明るいあかりがもれてくるようだ。それをとても……わたしは胸をいっぱいにひろげて、うけとめたい気持ちでそわそわしているのに、歩みはとまらず、どこまで続くか知れない螺旋階段をのぼっては、のぼってゆく。
屋上レストランに辿り着いたら……そこはひかりでいっぱいだろうか。
たくさんの過去のパレードがここへやって来るのを見下ろしながら、わたしはどんな気持ちで、ささやかな最後の食事を口にはこんでいるだろう。
遊園地はもうすぐだ。…… ……
*初出:『隔月刊 ミルチァン』vol.-1(DesignBasket)2009.5
遊園地へII
今唯ケンタロウ









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