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春の心臓

高村而葉


居抜きの心臓に転居する
例えばそれが誕生だとして
春には春を
鼓動させて、みる

家具の隙間に落ちていた紙が取れずに
先回りする時計は未知なるものを呼び寄せる
この部屋、壁の染み、柱の傷へ
         トン、トン、トン と
外からの流れ、針の示す先へ
  隙間から紙を押し流し、痕跡を残す未知なる

その未知なるものを救え

誰かがとぼけた顔で発車オーライをくり返す
新鮮な窓から
 コーラスの声がどこまでも伸び上がり
酸欠で倒れて幕を閉じる
不安定な結末を予測して、いた
  嘘撃ち、この心にはあらかじめ何かが潜んで
       ひそひそと喋る声がする、から
内側から刺された痛みが本物だとしても
刺激に負けないように
医者よりも慎重に
切らなければならないだろう、心臓
             この部屋で未知なる

その未知なるものを救え



高村 而葉(たかむら じよう)

大阪市大正区生まれ。
2009年、第47回現代詩手帖賞受賞。


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