居抜きの心臓に転居する
例えばそれが誕生だとして
春には春を
鼓動させて、みる
家具の隙間に落ちていた紙が取れずに
先回りする時計は未知なるものを呼び寄せる
この部屋、壁の染み、柱の傷へ
トン、トン、トン と
外からの流れ、針の示す先へ
隙間から紙を押し流し、痕跡を残す未知なる
その未知なるものを救え
誰かがとぼけた顔で発車オーライをくり返す
新鮮な窓から
コーラスの声がどこまでも伸び上がり
酸欠で倒れて幕を閉じる
不安定な結末を予測して、いた
嘘撃ち、この心にはあらかじめ何かが潜んで
ひそひそと喋る声がする、から
内側から刺された痛みが本物だとしても
刺激に負けないように
医者よりも慎重に
切らなければならないだろう、心臓
この部屋で未知なる
その未知なるものを救え
春の心臓
高村而葉















