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ラバのこころ

ジェーン・ハーシュフィールド

なにもかもがうまくいかない
そんな日々にはしっかりと
これをあなたのこころにとどめなさい――
ハエ、土ぼこり、なんともいえないにおい
まだ中身をつめていない籠がふたつ
ひとつはレモンとパッションフルーツの籠
もうひとつはあなたがなくしたものすべての籠。
ふたつともからっぽのまま
それはあなたの肩に近づくと
あなたのむきだしの腕にゆっくり息をふきかけるでしょう。
干し草をさしだせば、食むでしょう。
なにもあたえられなければ
あなたが望むかぎりたたずんでいるでしょう。
轡についたちいさな鈴がしずかに
あなたの横に垂れさがるでしょう
暑いさかりに わずかな木陰のなかで。
まばらな鬣や左耳をそよがせ夢見ている姿に
まどわされてはいけません。
これもまた しずかに満ちたりた
神々の贈りものなのです。




(ジェーン・ハーシュフィールドの詩「ラバのこころ」(Mule Heart)を拙訳で紹介させていただいた。この作品は、1997年に出版された彼女の第四詩集『こころのうちに生きるものたち』(The Lives of the Heart)に収められている――山内記)


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山内 功一郎(やまうち こういちろう)

アメリカ詩研究

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