倒れたまま動けない兵士の
傷口に射し入る
陽の光は薄かった
けれど兵士の瞼の裏には
眩しいほどの光が満ちていた
恋人と家族の待つ故郷@ふるさと@の緑地を走るのに
十分すぎる光だった
地虫として生きるのだ
おまえは地虫として生きるのだ
兵士にその声が届いたのだろうか
化学兵器で声帯をやられていたから
声は出なかった
ただ兵士の心は浮遊し
僅かな光に
鋭く溶けた
憎しみと和し
悲しみと和し
己を啄むことはない
声は続き
弾痕に託された怒りのまま
兵士は夜の眠りに落ちた
地虫として念を残して
かくして地虫第七万八千二百三十一号の誕生である
当然のように夜が明けた
(「交野が原」第67号より)
初陣
渡辺めぐみ
渡辺 めぐみ(わたなべ めぐみ)
東京生まれ。
第一詩集『ベイ・アン』(二〇〇一年、土曜美術社出版販売)収録の一篇で第十一回詩と思想新人賞受賞。
第二詩集『光の果て』(二〇〇六年、思潮社)で萩原朔太郎生誕一二〇年記念・前橋文学館賞受賞。









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