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空中庭園

高村而葉

真昼の庭園で、非常にまっすぐな声がラベンダーを千切る
老婆たちの、不在を押し返す力
わたしは、無人島で息を殺す人、ひとり
そんな気分を打ち破るのは
いつだって、めくれあがった音と音の間で降伏しない
呼吸のようなものたち、空中の踊り子
喜び、ささやき、新鮮な香りが体内を通過して
老婆たちは地上に裏声を落とす
かつて苦悩がなかった頃の、土の中までも
透明な輪として、火の輪をくぐりぬけて
一本の細いワイヤー上で擦れ違う、いくつもの熱に
眼底の河岸で木が燃えあがる
聞け! 見よ! 
なんども人々が通り過ぎて壊れてしまったドアが
揺れるたびにあげる悲鳴で、どうしても振り返ってしまう
わたしは、空中で息を殺す人だから、悲しまない
そうありたい、として、どうなるというのか
腹の池には蓮が浮かび、食べよ食べよと根がつつく
魔術で眠る花、いまだ開かず
パンとおにぎりに集まる蟻を指で弾いて
宙に舞う姿と、タフな行進を眺めて
安心するのだ、訳もなく、なくたっていいさ、そっと
米粒を一つ置き去りにして、庭園を歩きまわり
蜂だ、蝿だ、メダカだ、ああ、黄金虫の死骸が風で飛ぶ
真昼の庭園、痩せ衰えたベンチに座り
古本屋で買ったガリバー旅行記をパラパラとめくって
降伏はしない、そう呟く、それから
一羽のスズメが米粒を、さっとくわえて飛び去った
でも 、その早業に嫉妬しない
この体の大きさによる優越とは関係なく、もちろん
舌を切られたいくらかの死への懺悔でもなく
諦めの優しさでもなく
壊れたドアをそっと開けて、踏みしめる、足裏の世界、を
まっすぐに千切る
いじめないで! と叫ぶ、幼児の声が
空中でおおきく飛び跳ねる
泣け! 泣くな!
それがおまえの立っている場所だ

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高村 而葉(たかむら じよう)

大阪市大正区生まれ。
2009年、第47回現代詩手帖賞受賞。


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1 コメント “空中庭園”

  1. ma より:

    もっとユーモアが出てくると良くなるかもしれません

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