おでこからももいろ(後編)
ざくざくざくざく自転車こいで さわやかに家まで帰り家帰っても ふーん。ふふーん。は全然切れず来月締め切りの朝日のうた、どれにしようと やってずっとやって夕方までやって全然とぎれへん おでこからももいろ効果すご。アールグレイのせいもきっとあるけど、話しかけられたとき むしろ こころちょっと下向いとったのにゆわれてから うわ向きなって いつのまにか もう6時で ああもうずっと歌やっとった。はかどった。すーごいなあ。
そして さっきのできごと、その中でも(母方のなんちゃらかんちゃら)を母にゆうて家族ごっこにおける母に苦労する娘役つきつけ。母を(わたしから)、じゃなくて 今日ゆわれた、てゆう公の理由から責めたりたくなる たいがいわたしもいじのわるい娘やなあ。いやったらしい。しかし いやったらしい役もせえへんことには生きられへん。
りんりんりん りんりんりん
「わたしです」
「ああ」と、むこうは もそもそ口の中に何か入ってる発音
「何食べてんの りんご? 」
「ちがうよ。玉子焼きにねえ‥にんじん刻んでねえ‥にんじんを先、刻んどくねん。それタッパに入れといてな。にんじん 玉子焼きに入れたらいいって こないだ吉岡さんに教えてもらったからやってみてんやん。そしたらよかったよー。色みはいいし。」
「え それ食べてんの? 」
「ちがう。それは昨日してんやん。今はねえ‥‥‥」
「なに?」
「‥‥‥‥‥じゃがいも。」
「ふうん」
「じゃがいもて おいしいねえ。」
「まあねえ」
全くこの人は のんきなひと。
「そんなこともあれやけど あのさー さっきさー。わたし仕事あけで道 歩いとったら急に呼びとめられて おでこからももいろ出てるゆわれてさあ」
「あはははは。 え?」
そこから さっきの顛末をざっくり話すと
母「あんたそれ、あれやで、あれ。」
「え?」
「テレビでやってたのとそっくりやわ。」
「うそやん 」
「ほんっま。今聞いてて わたし鳥肌立ったわ。」
ああ(母方のなんちゃらかんちゃら)と軽く脅すどころではなくなった。
「うそやん?!でも話したひとふつうやったで。」
「だから ふつうやねんて。それを上であやつってんのが悪いのんなんちがう?あんた 名前とか教えてへんやろうね?」
「え。教えてへんよ 」
「教えてたら あぶないところやったわ」
「え、どうゆうことよ?」
「つけねらわれるとこやで」
「うそやん。でも わたしをどうしたってお金ないやん 」
「そうや。実質は そうやねんけど 何かちょっとあるように見えたんちがう? 気いつけや。」
「だまされた気してきたわあ。そうなん?ほんまにそうなん?ショックやわ、おでこから何か出てるってゆわれたんも うそなん? なんか あれからやる気出てめっちゃ書けとったのにさー。」
「じゃあよかったやん。そこだけもらっとき。」
「えー なんか気分悪くなってきたわー」
おでこに手をあてた。急におでこから何かようわからん邪悪なものが出てるような気がしてきた。
あ。そういえば。
なんか「せんせい」のお付きのものの顔。
バリか どこかわからへん どっかのみやげの土のお面みたいな。あ。そう。わらった顔が。あの土人形そっくり。て「ぱ、」と見た瞬間、最初に見たしゅんかん思ったはずやったのに。
数日後。
三鷹で「せんせい」らしき女を見た。
何だかリラックスムードで白いTシャツにデニム、肩からエコバックさげホームを歩いていた。
そこで、わたしが逆に(このあいだはどうもー )って狂った人みたいな芝居して、つきまとったら、こないだはわたしが(狙われる人)やったんが、たちまち「せんせい」が、(狙われるほう)で、わたしがヒステリックかつエキセントリックに「きー。きー。」とかゆったら。もう休日の白いTシャツやエコバックも台無しやなあ。そして狙う・狙われるも、どこでどうなるやらわからへんなあと思えて 少しわらえてくる。
人をだます人にも休日はあるやろうしエコバックさげて帰る先には家族や。ひょっとしたら子もあるんやろうなあ。と妙な気になって家に帰っていったわけでありんす。
そこから また加えること数日の後 家に電話して出たら 父。
「なんか宗教にだまされかけたらしいな。気いつけなあかんぞ。」
と軽くいなされる。こうゆうときは、ふん。軽く鼻を鳴らそう。
今橋 愛(いまはし あい)
1976年大阪市生まれ。歌人。
2002年、「O脚の膝」100首で北溟短歌賞受賞。
著書に歌集「O脚の膝」。同人誌〔sai〕、snell、未来短歌会に所属。
ホームページhttp://www.aaaperson.jp/















