来た 黄河が来た
天井や床下や手のひらに来た
驚くほどの水が流れて来た 生命が
大空と大海とを またぎ越して来た
こうなると茶の間に
僕は寝ころぶしかない
このままでは当然ながら我が家は洪水
どうしたら良いものか
黄色い土と砂を噛むしかない
今日の夕食はタンドリーカレー この時も
河が流れていることを忘れない
きみにも僕にも無限や
有限や 愛や 怒りや
三角州があり 水面は
黄色い永遠を運んで来る
僕らの子どもは
黄色い運命
可愛らしいこの頬
妻の心臓を流れる大河に
かつて僕は祈った
生まれてこい 強く
優しく 派手に
本日の黄河も絶好調だ
三人家族で漂流する幸福が来た
皮膚が変わる午後が来た
また生まれる角質が来た
お父さん 来た
お母さん 来た
来た
ぼくの足の裏にも
黄色が来た
初出「読売新聞」
黄河が来た
和合亮一
和合 亮一(わごう りょういち)
1968年生まれ。
第1詩集「AFTER」で第4回中原中也賞(1999年)、第4詩集「地球頭脳詩篇」で第47回晩翠賞を受賞(2006年)。
読売新聞・日経新聞(夕刊)・ディズニーファミリーサイト等に連載中。









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