町工場の娘たちは良く働く
騒々しい機械音につつまれて 、量産する商品を床にぶちまけても、折れない
背筋を伸ばして 、子供なら絶対に落とさない、と、けらけら笑う
その声は、どこか隅に留まって離れないから 、例えば
明るい線の上に、暗い線を誤差なく引いて、更に上から赤い点を大きく描く
そういった作業手順に惑わされない心を働かせて
人は砕けた物質に引き裂かれることはない 、けれど
暗い線はなかなか消えないんです、と怒る
子のない娘たちは煩わしそうに、機械油を洗い流して 、だが
途方もなく長いキャラバンの、終着点ではない到達点で、嘆きはしない
きみらは本当に、脆く強く、立ち尽くす
ああ、そうだ
疲労が狂わせることのない指先へ、生活の血液が循環するなら
さあ開け、と念じるまでもなく、開くのだ
指先から紡がれる日々を渡って、水を撒け、さあ
わたしたちは汗みどろ 、泥のような顔をした人が休む場所はどこだろう
また明日! HOPEを燻らせ吐かれる煙は、町を極めてくっきりと、独りにして
灯りの落ちた工場に埃が自由に舞い降りる 、着地点に朝、誰か訪れるまでは
人に怯えるゴキブリなんかと一緒に、夜を過ごすのだ 、台所で
ふえるワカメがふるえているのを見ている、その時も、内密に渡された切符で
わたしたちは移動し、食べて寝て、それからまた働く 、煮詰められる魂よ
お疲れさま、休むことなく動くものすべて 、人だけではなく
にがい経験を知るものすべて、おやすみ 、つかの間の火に照らされた
窓の両側から鉢合わせて渦巻く洪水を眺める、赤いカーペットの上で
人はみな台風だから、だから 、と
小指を立てた老人が、約束する暇もなく立ち去ってから
夜のしじまにスゥーっと動く、父母が、遠く消え立つ、濃度がゆれる道の中央で
逆立った表面と煮えたぎる内面を縫う針が、恥ずかしいほど健全な模様を描いて
針穴に重なる寝息が、やあやあ、深々お辞儀する 、胸元から
濡れた風景画がちらちらと見えて、おっと
身構えちゃいけない 、警戒する獣が歯を剥き出しているのは
画布に染み込む湿度で、体毛がべっとりとして不快な、しかし
サザメイているから 、だから、風景の中で動くものをポケットへ 、さあ
わたしたちは遠くを、遠くをして
わたしたちを着ている風景を歩いている 、と
くぐりぬけた先で開いた呼吸が 、怯えるものを過ぎて
大理石の大きな彫刻が 、鳴き床を鳴かせない歩き方でいなくなった後
目覚ましい時計音で 、静かな体温が持ち上がる、きっと
誰かがやってきた 、けどそれが誰かは追及しない、息の内側に
はみ出していった模様が、幻でもなく風景を彩って
町工場は今日も早起きだ
Factory 1
高村而葉















