なぜそっとしておいてくれないのだろう
吹雪の中に吹きだまりができるのは
理由があるからだ
吹きだまりを
雪まみれになって抱きかかえることもできぬ者が
口を出さぬがよい
そう答える力もないほど
凍りついていたから
今日は心に
ガーゼをかける
ガーゼの厚さと大きさは
雪を呑んだものだけが
決められる
焼けつくような冷たさと
大気にけぶる放射能の含有率の高い塵の味を
悟ったものだけが
決められるのだ
「雪の城で圧死した者を葬るところです」
「立ち会いますか」
僧侶とおぼしき者たちが
白装束の裾で問う
「立ち会わないのですか」
「立ち会わなくてよいのですか」
まぶたを上げぬまま
「雪になってから参ります」
とわたしは言った
吹雪が止んだ
葬られるのがわたしであるか否か
確かめたくはなかった
信頼は
築きあげるものにはあらず…
真理を追う者が
追いすがるものにはあらず…
僧侶とおぼしき者たちが
列を作って去ってゆく
この光景は
雪の芯のように鮮やかだ
いつの日も
わたしの眼の底に
日の出のように
深く沈むだろう
「不浄の地を
雪が焼き尽くしてから
そのひとひらとして
立ち寄ります」
とわたしは言った
(「交野が原」第66号より)
浄夜
渡辺めぐみ
渡辺 めぐみ(わたなべ めぐみ)
東京生まれ。
第一詩集『ベイ・アン』(二〇〇一年、土曜美術社出版販売)収録の一篇で第十一回詩と思想新人賞受賞。
第二詩集『光の果て』(二〇〇六年、思潮社)で萩原朔太郎生誕一二〇年記念・前橋文学館賞受賞。
第三詩集『内在地』(2010年、思潮社)で第21回日本詩人クラブ新人賞受賞。
今年度より世田谷文学賞選考委員。















