仕事あけ へやで1本えいが見て返却ゆき、5本で1000円キャンペーン実施中と紙が貼ってあるから ? と思うが借りないで駅前でアールグレイ飲んで窓際の席あいてないし案もひらかないしで またてくてく自転車置いたとこまで戻る途中の店でキャベツ安いから はちじゅうはちえん、「ふくろ いりますか」「あっ いいです」と かごばっくに放りこんだら ぶ厚い百人一首の本と重なって かごばっくいっぱいいっぱい。斜めの花屋で切り花買って花あかるくて。きいろでピンクでかがやいて (もわん)じゃなくて(すぱっと)した色、今のわたしに足りない(すぱっと)した態度の色。こうゆう色、こころの内がわに少しほしいな。
そして小さな花の束抱えイヤホンからは好きな曲流れ またすたすた歩ってたら急に
「なにか新しいこと はじめられましたか?」
え、なんでわかんの?と思ったら
「今ものすごくいいものが出ています。おでこから ももいろのものが。」
おでこからももいろ、?
おでこはわかるけど ももいろ、て何?そんなん今まで聞いたことない わたしには とんだとんちで うわ。とんちあてよった、あてられてしまったから
「え、」と成り
「普段 どちらかで何か観ておられるんですか?」と問えば
「いえ。普段は むにゃむにゃむにゃむにゃでカウンセリングを 」
と言うからカウンセリングとゆうことばにわたしの中のスイッチ入り、あんた そんなんできる器なんですか?と悪意見つけるように じっくり話しかけてきた女の人を見ることには。悪意のある顔ではない。
そういえば、さっき駅前で寄付を募っていたものの顔 邪悪な感じ。邪悪なものが募るものを信じない。見た目ですべてわかるなんて思わないけど、ずるい者は やっぱりわかるんじゃないのか。むにゃむにゃむにゃむにゃでカウンセリング、のこの人、邪悪なかんじはしいひんなー。何というかふつう。そう、ふつうな感じ。
「せんせいは なかなか外では人をみないんですよ。」
「はあ‥」
「せんせい」のとなりに、そう言われたらもうひとり女の人が立っていて、「せんせい」に黒い日傘をかざしてわらっている。なんやなんやこの人。あなたはお付きのものなんですか?ここはのんびりした午後の住宅街ですよ?こうしている間にも間断なく往来はあり、さっきの喫茶店にいた大学生らしき青年が今、通りすぎていきました。
それから わたしの持ってる花、ちらと見て
「お花をやってらっしゃるんですか?」
「いえ‥」
「では もしよろしければ 少し手相を」
あれあれ 何でか午後の住宅街 手を出している。左手。
「やさしい方でいらっしゃいますね」
「はあ‥」
「介護福祉が向いています」(うわ)「結婚も向いています」(うわっ)「いい奥さんになれますよ」(うわー)道すがら急にそんなん言われて
「ただ‥‥、今、どなたかとの関係でこころを使っていらっしゃいますね」
(どなたかってだれ。だれ。)
「それが この盛りあがったところの線にあらわれているのです。」
「あー、はあ‥」
「欲がたくさんあるんですね。」
「はあ‥」
「でもそれは。あなたが、というより あなたのご先祖がそれを望んでいます。ご先祖が、あなたを今助けていますから きっと実現できる。いいものをお持ちですよ。ただ‥‥それは‥‥。失礼ですが、お誕生日はいつでいらっしゃいますか?」
「7月です」
「あ、今じゃないですか?! そうですか、やっぱり今 いい時期なんだー」と 「せんせい」は合点した。
「とてもおやさしいし、しあわせになれる強運です。ただ‥‥母方のほう、お母様が大変ご苦労をされてきている方のようですね、」(え、なに、そんなこともわかるんですか)
「目のうえは目上と言って、ご先祖さまのことが見えますから(ああこの人、先祖先祖ゆうて、はんこ売りつけるつもりかなあ、わたしそんなお金ないのに人まちがえてるやろー。はちじゅうはちえんのキャベツ入ってんのに。花なんか習うわけないやん。)(まだ発音は続いてる)‥‥運のいいときは長く続きませんので 運のいいときの過ごし方とゆうのが大切になってきますねー」
(ああちょっと この人。わたしになにを望む?お金もってへんよ?なんかあやし?
あやし、の人?)
「もし2、30分よろしければお名前と生年月日で もっとわかることはあると思いますけど‥‥ 」
「まあ先生よろしいんですか?!まあ先生。」日傘持ちの女が発音する。
「おでこからなんか出てるとか よくわからないんですけど。」
と、もし、ほんとにおでこからももいろが出ているのなら それを見られる、見られている
のは何てはずかしいので わたしはおでこを手のひらで かくした。
「わからなくても いいんですよ。応援が来ているということです。」
「なんかいいことゆっていただいて ありがとうございました。前向きにがんばります」
「ああそうですか。せっかくなのに残念です」
「さようなら」
「さようなら」
そのまま わたしは すたすた歩きだし、ふり返ったら だいぶん小さくなった「せんせ
い」とお付きのものとが見え、そうしたら うれしくなって にたにたして。ふふー おで
こからももいろねー 情に厚いやさしい人ねー ふーん。先週 おもしろい人ですねって言われたしなー。おでこから出てんのやったら 行けるんかな。おー。やっぱ7月。なんか書こう。
すれ違った女学生に、かなり怪訝な顔で見られた。ふふん でもいいねん。だって。だってなー。おでこからももいろ出てんねんもん!何かようわからへんけど おもろい。ぎょ。ぎょ。きょえー。(つづく)
エッセイおでこからももいろ(前編)
今橋愛
今橋 愛(いまはし あい)
1976年大阪市生まれ。歌人。
2002年、「O脚の膝」100首で北溟短歌賞受賞。
著書に歌集「O脚の膝」。同人誌〔sai〕、snell、未来短歌会に所属。
ホームページhttp://www.aaaperson.jp/















