喜びは悲しみの父
死は生の花嫁
暗がりに貢ぎ物をした男よ
予審判事が来る前に
友はぶら下がっているだろう あの場所に
天は高く 地は低い
裏切りという言葉を発せずして
慟哭の賛否を問うがため
早朝までにぶら下がっているだろう あの梁から
悲しみには毛が生え
無風にもそよぐ
遠くの日なたに干しておけ
妬みは
血がしたたるまで逆さにし
しもべのように干しておけ
死にそろう生を
いくさと呼ぶ
カーテンが静かに揺れる
選ばれたものだけの時間
聖職者は交尾を開始する
彼らはとても疲れた虫だから
彼らはとても虫だから
喜びは悲しみの残像
死は生の胎動
翼のないものたちは目を閉じてはいけない
喜びは悲しみのかそけき父
死は生の清らかな花嫁
翼のないものたちは決して目を閉じてはいけない
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翼のないものたちはいかなるときも息をせよ
はやり病いが大地を這いずり
煙が幾度立ち上ろうと
記憶の谷を川は流れる
翼のないものたちは息をせよ
葬られても息をせよ
(『光の果て』(二〇〇六年、思潮社)より)
翼のないものたちに
渡辺めぐみ
渡辺 めぐみ(わたなべ めぐみ)
東京生まれ。
第一詩集『ベイ・アン』(二〇〇一年、土曜美術社出版販売)収録の一篇で第十一回詩と思想新人賞受賞。
第二詩集『光の果て』(二〇〇六年、思潮社)で萩原朔太郎生誕一二〇年記念・前橋文学館賞受賞。















