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しゃしんがあってよかった

今橋愛


桜みにいきましたね
たぶんきゅうねんでにかい
なんで9月にそんなことおもいだしたかといったら。


しゃしんがでてきたのです
わたしがひとりで おしろの。しきいしのうえで あの白いすかーとをはいて
わらってるしゃしん
ちょっとびっくりした
あなたといてわらってたことがあったなんてもうわすれてたからです
わたしは あなたのほうをむいて ぶーつはいたあしをすこし立ててすまして。わらってるかおはみだしそう はずんで。はずんで。
そのこころが 今さんじゅうにになったわたしにも伝わってくる いいしゃしんです
桜をみにいったのに桜はどこにもうつっていなくて
うしろに小さくうつっているとうろうが ももいろでかろうじてそれらしい


わたしたちは まだ このときはこいびとどうしでした
わたしたちは まだ このときは つながっていました
わらっていました はずんでいました 歩いていました
なにをまちがえたのでしょう


あのおしろにだれかと桜をみにいくとき
いつかあなたがあなたのたいせつなひととみにいくとき
白いすかーとをはいて
あなたをまだすきだったわたしをあなたはおもいださない
わたしがあなたとわらったことを もうおもいだせなかったように
あなたのきおくのなかのわたしは いつもないていて あなたはそれにくるしみますそして
そのうちそれもきえますからあんしんなさい
あんしんしてわたしをわすれなさい


しゃしんがあってよかった



今橋 愛(いまはし あい)
1976年大阪市生まれ。歌人。
2002年、「O脚の膝」100首で北溟短歌賞受賞。
著書に歌集「O脚の膝」。同人誌〔sai〕、snell、未来短歌会に所属。
ホームページhttp://www.aaaperson.jp/

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