六本木詩人会 六本木詩人会 ホテルアイビス六本木

静物

渡辺めぐみ


風と風がハグしているね
分かたれるために
今は激しくハグしているね
春を売る子が立っている
誰にも話したくない言の葉を
向日葵の花と一緒に埋めた子だ
花がしおれて水影に
深くうつむく日もあるだろう
「中央無線のタクシーにわたしを置いてきてしまいました」
春を売る子はいつかそんな供述をするのだろうか
風と風がハグしているね
あの子はとても綺麗だね
倒されるまで立っていな





(「蔕文庫」第34号巻頭詩)



渡辺 めぐみ(わたなべ めぐみ)
東京生まれ。
第一詩集『ベイ・アン』(二〇〇一年、土曜美術社出版販売)収録の一篇で第十一回詩と思想新人賞受賞。
第二詩集『光の果て』(二〇〇六年、思潮社)で萩原朔太郎生誕一二〇年記念・前橋文学館賞受賞。
第三詩集『内在地』(2010年、思潮社)で第21回日本詩人クラブ新人賞受賞。
今年度より世田谷文学賞選考委員。

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