六本木詩人会 六本木詩人会 ホテルアイビス六本木

な た

渡辺玄英


このところ毎晩 ひとりずつ
夢の中でわたしに会う
どうしていたの と
話しして
あとは
湿った夜の公園にでかけて
くらい池のほとりで
ふたりして死体を埋めたり
するの
けいさつに見つかる
かなあ
みつかるさ
だっていくら土をかぶせても
手がうまく埋まらない
 (あしたまでは
  なんとか元気ですごしたい


鉈ってなんて読むの
なた なんて痛そう
鉈で殴られたらお神楽を舞うの
ぴゅうぴゅう
ぴゅうぴゅうって息がきれて
くたってなって
目の前に星があんなにちかくって
ああそんなもんかなって
ひんやりした土をかぶせられたりするの
さんにんころしたから
あとひとりころすかもしれない
でも手がうまく埋まらないでしょ
うごけたら いいんだけど
すこし狭いねここ


コンビニまでいって
ワイン買っておいでよ
それからガムテープ
ノコギリ ホーチョー スコップ ロープ ストッキング 
ハリガネ セッケン シャンプー みどりのたぬき コーラ
カイチューデントー ウェットティッシュ カロリーメイト
あそこには何もない何もないから吸い寄せられてしまうぼくらわたしら
みずのなかのうすい空気をすいこむのはかなしい手も足も顔もだれにも
知られないだれのものでもないぼくらわたしらハいないやすらぎ消えて
しまうからだ叩いてもつねってもそんなものうすれちゃってなにもない
ねえあやなみここからはじめよう
コンビニにはユーレーがいるって誰かがいってた
マガジンラックのまえで立ち読みしていると
すこし離れてだれかがいる気配がする
さびしい と うれしい
のまざりあうあたりに
あなたがいるように
いる と いない
のさかいめの
かすかなふるえ
コンビニのユーレーには匂いがないって
声紋がないって
4組のアスカとヒカリがなーんて話してたんだって


でもいくよね 毎日
夢のようでも いくよね
知らない街で迷子になっても
あそこに行けばほっとするよね
(にせのわたしでもうれしいもん
ガラスのむこうは蜃気楼の街は彼方
セミがうるさく空はたかく
でも何もかもがのっぺりとして
記憶があたまから流れ出してしまった街に
空っぽのコーラ缶が
記憶のカケラみたいに立っているね





初出→「九」4号 1997.3.25



渡辺 玄英(わたなべ げんえい)
詩集に『海の上のコンビニ』(思潮社)、『火曜日になったら戦争に行く』(同)、『けるけるとケータイが鳴く』(同)など。
現在、「現代詩手帖」誌にて詩誌月評を連載中。

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