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らら駱駝もう止せ駱駝だだ

和合亮一


おやすみ 眠る前に
髪を梳かせば
駱駝が一頭歩いてくるので笑うしかない 

                  わははははは運んでくるこぶがくすぐったい
眠る 眠らない わははははははははははははははははははははははははははははは
電話の無い亜細亜ホテルの寝室では 駱駝が一頭 駱駝が二頭 ははははははははは
はは夜の道では黄金の子どもが 
              算数をしている 記憶を無くしている はははははは
ははは 一人の海を飼いならして 話に夢中になっているうちに 頭の津波は静まる 

にににににににににににににににににににににににににににににににににににににに
二頭のアジアゾウも立ち止まり 宇宙を空洞にするかのように 短く 鼻を振り回す
わたしの名前を八つ裂きにしてる鷹の爪 
                   夜の稲妻を浴びて落花生は死んでる はは
眠れ 眠らない はははははははははははははははははははははははははははははは
たったいま 何億ものこぶは眠らない はははははははははははははははははははは

砂漠と事実とが枕元に逃げてきたのだ ふとしたすきに跡形もない ははははははは
はは世界は広すぎる寝室 はははははははははははははははははははははははははは
ははは駱駝の隊列があるべき姿を失う 
                  というより駱駝そのものを ははははははは

雲を裏切る青空ばかりが打ち上げられる青海湖の波打ち際では魚の後ろを魚類が泳ぐ 
髪を梳かした恋人よ  あなたの名前は名前の上で消えてる 左手に左手が落ちてる
し心臓で帆船は風を受けない 花を乗せない 丈高い雑草だけが積まれている はは
はははは頭の底の虎の背中で青竹の影が揺れてるぞ

駱駝が二頭歩いてくるので笑うしかない
  何億ものこぶは眠らない
                       
     寝室の床で銀のサジはもう拾えない はははははははははははははははは
ははははははははははははははははははは燃えあがる駱駝の脾臓と深夜の石垣島 !
ははは  はは電話の無い寝室では駱駝が一頭 ヒツジが二匹 ははははははははは
眠れない ははははははははは   わあ   わははははははははははははははは

ははははははは真夜中の滑り台へ向かって腕時計をぶん投げてしまったひひひひひひ
ふふふふふふふ姿の見えない寂しさがあはははははははははははははははははははは
はははははははひとりぼっち下を向いて泣いている亜細亜あははははははははははは
へへへへへへへ金色の子どものわたしだおよそ6歳あはははははははははははははは
さささささささあ宿題 いろんな世界の不足を合計してみようよははははははははは

ははははははは一つの目玉しかない鹿があははははははははははははははははははは
ははははははは三十本の角を振り回して威圧しているあははははははははははははは
ははははははは世界中の人たちが眠りに落ちればいいのにあははははははははははは
なななななななななななな何億ものこぶは眠らないいいいいいいいいいいいいいいい
ははははははは何億もの犬が一斉に土の中から追いかけてくるなああははははははは
はははははははは黄金の子どもよ もう銀紙の計算用紙は丸めて捨ててしまえあはは

はははははははは火星の墓地に風が吹いているからあはははははははははははははは
はははははははは紫色の絵の具を独占したいのならブドウのツルの先で踊れあははは
はははははははは亜鉛の山脈で遭難するしかないあははははははははははははははは
ははははははははは水晶の山頂で花びらの足りないチューリップを咲かせるしかない
駱駝が三頭歩いてくるので笑うしかない 何億ものこぶは眠らない何億ものこぶは眠

わわわわわわわわわわわわわたしのここここここここここ こ、、、、、、、、、、
こぶがくすぐったい、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
亜細亜

くく暗闇のなかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかか
まままままままままままままままままま窓がないいいいいいいいいいいいいいいいい
てててててててててててててててててて天井がないいいいいいいいいいいいいいいい
さ砂漠と事実が逃げてきたふふふとしたすきに跡形もないいせ世界は広すぎる寝室つ
こここ、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、

ここここここここここここここここぶは眠らないいいいいいいいいいいいいいいいい

ははははははははははははははははははは世界中の橋が橋を渡すと倒れるのは陸橋!

手手手手手手手手手手手手手からこぼれる手形の手手手手手手手手手手手手手手手手

手手手手手手手手手手手手手からこぼれる手形の手はこぼすななななななななななな

手手手手手手手手手手手手手から左手が落ちてゆくくくくくくくくくくくくくくくく

ああああああああああああああああああああああああ頭の奥で少しだけ握りしめると

ゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆ指のすき間から

こここぼれる亜細亜のすすすすすすすす砂なななななななななベッドは砂の海みみみ

おおおおおおおおおおおお溺れるから眠ってはいけないいいいいいいいいいい亜細亜

ららららららららららら 駱駝が五十億一頭 駱駝が二頭 ううううううううううう

かかかかかかかかかかかかかせいのよあけが髪を伸ばしてるるるるるるるるるるるる 

くくくくくくくくくくくくくうきが髪を伸ばしてるるるるるるるるるるるるるるるる 

りりりりりりりりりかいできるりかいできない西北西風ががががががががががががが 

かかかかかかかかかかかかかか髪を伸ばしてるるるるるるるるるるるるるるるるるる 

ななななななななんきょくがほっきょくにほっきょくがなんきょくになるるるるるる 

ゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆっくりとおおきくなる宇宙ががががががががががががが 

はははははははははは八十七頭目のこぶにすわって髪を伸ばしてるるるるるるるるる 

こここここここここぶが目を開くから月の砂漠は不安で眠れないいいいいいいんだよ 

ほほほほほほほほほほほほほほほほらあれれれれれれれれれれれれれれれれ喪失せよ

らららららら駱駝の隊列があるべき姿を失うというより駱駝そのものををををそして
  
ななななななななななななな何億ものこぶは眠らないいいいいいいいいいいい砂の丘

だだだだだだだだた誰か わたしのこぶをどうにかして欲しいいいいいいいいいいい

くくくくくくくくくくくくくくくくすぐったいいいいいいいいいいいいいいいいいい
 
かかかかかかかかかかかかかかかか髪を梳かすななななななななななななななななな

か掻きむしれさ散々に切り刻めあ頭を叩けなな泣きわめけけさ逆立てろ七三分けしろ

らららららららららららららららららららららららららららら駱駝が一頭歩いてくる

 


初出「現代詩手帖」誌より



和合 亮一(わごう りょういち)
1968年生まれ。
第1詩集「AFTER」で第4回中原中也賞(1999年)、第4詩集「地球頭脳詩篇」で第47回晩翠賞を受賞(2006年)。
読売新聞・日経新聞(夕刊)・ディズニーファミリーサイト等に連載中。

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