六本木詩人会 六本木詩人会 ホテルアイビス六本木

祝日

小川三郎



今日はもう火曜日でしたから
すずらんの香りも消えていました。
あなたが差し出した一週間の始まりを
私はほとほと歩き疲れてしまって
みちくさをしながら見た絶望には
難しい方程式が重なっていました。

そこには弁当を広げた子供たちが
日曜日に置き去りにされ風化しかかっていましたから
跨ぎこそうとすると
茸のように鈴なりになって私に生えました。
どうかこの一週間が終わりなく繰り返されますよう
子供たちがこれ以上
残酷なことになりませぬよう。

出来れば豪雨にまみれながら
花を咲かせる豪胆を見せたかったのです。
だけどもすずらんですら
今日はとうとう枯れてしまって
深爪した親指が痛かったのです。
夜になってからは
容赦のないアスファルトが恋しいのです。

禍々しい雲が私を追いつき
そう簡単には済まないと忠告しました。
そのことを真っ先にあなたに報告したかったのですが
悲しい結末になるのなら
儚い夢など見ない方がいいでしょう。
美意識は軽々しく宙を舞い
ふと離れいくもの、あれは、
二人にとても大切だったものです。

方程式を崩し一週間をとおかにしました。
はつかにもみそかにもしましたが
死ぬまで続けたところで
まだ火曜日です。
そこら辺を踏まえているくせすずらんは
今日は祝日だなんていうのです。
そんなこと言ったって誰もいない、
アルコールに染まった男がひとり倒れているだけでしょうに。

そのままでいると
子供たちが群がってきました。
彼ら、壊れたものには興味津々で
私自体にはもう用がなくて
自虐的に笑う、子供たち全部が
演技するのです、精一杯体を使って。

終わらない区切りの日々というものは
いつもそういうことなのでしょう。
彼方の虹も動かずにいます。
豚の鳴き声を兼ね備えた私の浮遊機能
エントランスまで行き着けたなら
アスファルトに頭を埋めることにするつもりです。


             (初出 酒乱2号)



このエントリをつぶやく このエントリーを含むはてなブックマーク Yahoo!ブックマークに登録 Googleブックマークに追加 この記事をクリップ! FC2ブックマークへ追加 @niftyクリップに追加 Bookmark this on Delicious

小川 三郎(おがわ さぶろう)
神奈川県生まれ。
2002年から2005年までの間、現代詩手帖投稿欄に詩を投稿。
以後、第一詩集『永遠へと続く午後の直中』、第二詩集『流砂による終身刑』を思潮社より刊行。
『ルピュール』同人、『酒乱』同人・編集委員。

1つ星2つ星3つ星4つ星5つ星 (4 投票, 平均値/最大値: 4.50 / 5)
読み込み中 ... 読み込み中 ...

ぜひコメントを残してください


  • 他のおすすめ


  •  
    六本木詩人会