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平和の象と子供たち

竹浪明

 今年2009年5月17日、LTTE=タミル・イーラム開放の虎が敗北宣言し、四半世紀以上に亘ったスリランカの内戦が集結しました。このニュースを聞いて真っ先に思い浮かんだのは、3年前の2006年2月、津波被災復興状況視察団の映像担当として赴いた同国で、泊めていただいた孤児院の子供たちの顔でした。そこに多くの子供たちが暮らす理由は、津波、内戦など様々。皆よく学び、よく遊び、そして炊事・洗濯・掃除とよく働きます。褐色の笑顔がまぶしく、周囲を明るく照らしながら。

 この視察の記録をまとめ、昨年12月に刊行された写真集『象と大樹と子供たち~Over the War,Over the Tsunami,Sri Lanka~』(角川学芸出版)の、子供たちに寄せた文章の中に、「ひとりひとりの笑顔に隠された、ひとりひとりの涙」と書きました。内戦の終結を彼らはどんなにか喜びながら、しかし消えない悲しみも抱いているでしょう。

 2004年12月26日、スマトラ沖地震による津波で、スリランカでは3万5千人以上の方が亡くなりましたが、約2千頭いる象は1頭も死んでいません。津波を察知して高地へと逃げたのです。また象たちは、津波被災の後片付けもしました。トラクターの入れない瓦礫の山に踏み込み、2次災害が起こらないよう抜いても安全な木材を、鼻で探って引き抜いていったのです。

 スリランカにはペラヘラという祭があり、世界遺産の古都キャンディで行われる最大規模のペラヘラでは、およそ百頭の着飾った象たちが街中をパレードします。2001年12月に停戦条約が締結された約半年後の2002年7月、そのキャンディ・ペラヘラを観に行きました。祭のクライマックス、満月の下をパレードする象たちは、地上を渡る百の満月のようでした。

 その後内戦が再燃し、ペラヘラもテロの標的になるのではと懸念され、開催が危ぶまれたこともありました。前述の津波被災復興状況視察に訪れた折には、コロンボで、ナワン・ペラヘラという、伝統的なペラヘラと時期をずらした2月に、やはり着飾った象たちが街中をパレードする祭を観ました。その粛々とした歩みには、津波や内戦で失われた数え切れない命への、鎮魂の思いも籠っているようでした。

 主役の象は、地に着くほど長く、そして先がクワガタの鍬のようにクロスした、特別な牙を持っていました。数日後、湖にほど近い寺で、衣を脱いだ彼と再会しました。祭で自分に感嘆した異邦人の一人と知ってか知らずか、マンモスのような牙の間から鼻を上げ、挨拶してくれました。その瞬間を撮った写真をプリントしたTシャツを、昨年エコロジー・チャリティー「Tシャツ・アート展」に出展したところご好評いただき、思いがけず「赤十字グッズ」に選ばれて、日本赤十字社から、世界の戦争や災害に苦しむ子供たちのためのチャリティーとしても販売されました。戦争や災害に苦しむ子供たち、それはまさにスリランカの子供たちのことでもあり、彼らのための「赤十字グッズ」に選ばれたのも、象の成せる業と感じました。

 今年も6月1日より「Tシャツ・アート展」開催中で、6月10日(水)~27日(土)までは表参道駅から徒歩3分の国連大学が会場(日月休館)です。今回は前記写真集より、親象と互いの鼻と尾を繋いで歩く子象の姿をプリントしたTシャツ、そしてUPLINKにご依頼いただいて監督・脚本・撮影を務め、今年1月に公開され、現在DVD発売中の映画『のら暦*ねこ休みネコ遊ビ*』のひとコマをプリントしたTシャツなど3点を出展しています。前者・子象Tシャツは子供たちのための、後者・野良猫Tシャツは地球環境のためのチャリティーになっていて、ネットでも販売中(来春まで)です。

 また、まちだ・さがみユネスコ協会にご依頼いただき、同協会主宰、町田市教育委員会後援により、7月5日(日)午後5時半~町田市民フォーラムにて、「イタリアとスリランカの家庭・自然・文化~津波を察知した象~日本の四季の猫と星桜」と題した講演&上映会を行います。今年の4月下旬から半月イタリアに滞在した際、ローマでお世話になった家庭には、スリランカ人のベビー・シッターがいました。両国の家庭生活についてや、あの津波をどうして象が察知できたのか、また日本の自然の中の野良猫や、約百本しか見つかっていない星桜という可憐な桜についてなど、映像を交えて語らせていただきます。

 講演会、Tシャツ・アート展、写真集や映画共に、詳細はhttp://takenamiakira.jpをどうぞご覧ください。
今年もペラヘラの時が巡ってきます。津波を察知した象たちは、長く戦争の痛みも感じていたことでしょう。内戦が終わった記念すべき今年、象たちが平和を漲らせた姿で行進することを、そして人々が心から平和の祭典を楽しめることを願います。








子供たちや地球環境のためのチャリティー2009「Tシャツ・アート展」
竹浪明出展作品(詳細はhttp://takenamiakira.jp)

写真集『象と大樹と子供たち』(角川学芸出版)より
親象と鼻と尾を繋いだ子象Tシャツ(色・サイズ各種有)
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映画『のら暦*ねこ休みネコ遊ビ*』(UPLINK)より
紅葉の波の中の野良猫Tシャツ(色・サイズ各種有)
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竹浪 明 (たけなみ あきら)
http://takenamiakira.jp
映像作家・文筆家・東京造形大学映画専攻非常勤講師。
「蘭賞」(俳句)、「平間至写真賞優秀賞」「文芸社ビジュアルアート社長賞」他受賞。
俳句×写真集『恐竜×ヴィーナス=17文字』(文芸社)、 写真集『象と大樹と子供たち』(角川学芸出版・収録写真によるTシャツが「赤十字グッズ」に)他。
監督映画『のら暦*ねこ休みネコ遊ビ*』(UPLINK)他。

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2 コメント “平和の象と子供たち”

  1. Victoria Romero Silva より:

    Akira, hombre hermoso. Te recuerdo a cada instante. Te traigo en mi pensamiento. Te digo ¡salud! con delicioso licor de ciruela mojando tus labios rojos.
    Mi corazón contigo.
    Victoria

  2. 竹浪 明 より:

    Victoria,recuerdo los días cuando leímos poesía en voz con poetas de cada país en Hiroshima y Nagasaki.
    El intercambio con las víctimas de la Bomba atómica empapó en mi corazón.
    (ヴィクトリア、広島・長崎で各国の詩人達と朗読した日々が思い出されます。
    被爆者の方達との交流が心に沁み込んでいます。)

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