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賊子

渡辺めぐみ

もうよそうね 光のパテを使うのは
いくら頑張っても この穴は塞げない
聳え立つ姉妹達は言った
諦めのようにではなく
とてもいとおしそうにわたしを見つめて
そして光源とも呼ばれている
その穴の放つあまりに巨大な光輝の中に
消えていった
唐草模様のサンドレスの裾を翻して
それでもゲル状の
まだフォルム以前の魂しか持たないわたしは
光を運び続けた
見たところ穴は輝き
しっかりと光のパテは機能していた
たとえそれが錯覚であっても
わたしは光を運ぶ
そのようにしてわたしは賢くなってゆくに違いない
もしかしたら至上の暗黒を
わたしは光だと言って育ててゆくのかもしれないが
姉妹達のようにではなく
それもまたわたしの定め
わたしは意志というものを未だ持たないから
光を運ぶ
血みどろの風まみれのわたしは
真昼の月のように儚い夢も持たないから
光を運ぶ
偉大な 末恐ろしい穴に向かって
粛粛と 毅然と
姉妹達のようにではなく
姉妹達のようにならないために
光を運ぶ

わたしは何も見なかった

 * 賊子…反逆者。不忠者。

『光の果て』(二〇〇六年、思潮社、萩原朔太郎生誕一二〇年記念・前橋文学館賞受賞)より



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渡辺 めぐみ(わたなべ めぐみ)
東京生まれ。
第一詩集『ベイ・アン』(二〇〇一年、土曜美術社出版販売)収録の一篇で第十一回詩と思想新人賞受賞。
第二詩集『光の果て』(二〇〇六年、思潮社)で萩原朔太郎生誕一二〇年記念・前橋文学館賞受賞。

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