きのうは神社のえんにちでした
はんぶんかかしのおじさんが
文字スクイのみせをだしていました
片目でわらって紙せいの
もろいスクイあみくれました
(たぶん片目はビー玉です)
(たぶん片手はぐん手です)
文字はひらひらにげるので
ぼくはひやひやおいました
水がゆるゆるしみこんで
あみはじわじわとけました
あかやきいろやきんいろの
文字はきらきらにげました
ぼうやきみは文字すきかい?
かかしのおじさんはききました
うんとぼくはいいました
(たぶんお口はうごいていない)
(たぶんお鼻はいきしていない)
そうかとおじさんはいいました
文字はわくですくうといいよ
こんなふうにこんなぐあいに
まねしてすらすら文字をすくうと
文字はびちびちはねました
ビニールぶくろにいれてもらって
いっしょにおうちにかえりました
ガラスばちにいれてもらいました
でもけさおきたら文字たちは
みんなぷかぷかういていました
だからきょうのこのにっきは
死んだ文字でかきました おわり
初出
東京新聞「詩歌への招待」三月二十八日夕刊
文字スクイ
水無田気流
水無田 気流(みなした きりう)
1970、神奈川県生まれ。早稲田大学大学院社会科学研究科博士後期課程単位取得満期退学。
現在、東京工業大学世界文明センター・フェロー。
2006年、第1詩集『音速平和』(2005年、思潮社)で第11回中原中也賞受賞。
2008年、第2詩集『Z境』(2008年、思潮社)で第49回晩翠賞受賞。
評論に『黒山もこもこ、抜けたら荒野 デフレ世代の憂鬱と希望』(2008年、光文社新書)。
URL:http://blue.sakura.ne.jp/~intermezzo









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