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惑星

小川三郎

駱駝は私に
顔を寄せて
素敵な匂いがするといった。
熟した岩山が立つ砂漠で
私と駱駝は笑いをこらえている。
こらえながらも滝のような涙を流し
その轟音で
会話を進める。

私と駱駝の間には
濃い緑海が広がっている。
じゃぼじゃぼと入水すると
一羽の鳥が頭上を飛んで
彼もまた笑いをこらえている。
私たちの顔は太陽に照らされるたび
何度も何度も入れ替わった。
愛らしかったり、
憎らしかったり、
狂おしかったり、
話せなかったり。
駱駝はまだいい匂いがするといって私に顔を寄せる。
そして前の大陸のことなど話し
私に手篭めにして欲しいなどと言い出し
その通り手篭めにしたり。

海底の砂には宇宙が落書きされている。
伝説にも語り部にもなりたくない私たちは
星座を注意深く避けて歩き
別の大陸へと到達し
そこもまた砂漠であって
あってもなくても
駱駝と私である私たちに変化はない。

砂のずっと下に
様々な鉱石が生まれつつあることを感じる。
その鉱石のいくつかを駱駝は飲み込んで
腹の中に持っていることを知っている。
それはきっと大樹の幹に埋め込まれ
命と時間を吸収している中途だ。
大樹の生長はすこぶるおそく
砂漠の対となるもので
私たちはその鉱石に映る互いの顔を見つめている。

そのとき
私たちの窓の外は吹雪である。
雪が窓に叩きつけられ
空には恐ろしい雲が踊っている。
駱駝はこの期に及んでまだいい匂いがするという。
私の垂らした涎を甘露と言って飲み干したり。
私は出来るだけゆっくりと大樹に覆いかぶさられたい。
そのような淫乱さが地球の丸みを作り
いかがわしさが世界の仕組みを形作った。
私と駱駝は緑そのものとなり
頬を寄せ合い
とうとう吹きだし
新しい惑星についての相談を始める。

             
(初出 「repure 7」)



小川 三郎(おがわ さぶろう)
2002年から2005年までの間、現代詩手帖投稿欄に詩を投稿。
以後、第一詩集『永遠へと続く午後の直中』(2005年)、
第二詩集『流砂による終身刑』(2008年)
第三詩集『コールドスリープ』(2010年)を思潮社より刊行。
詩誌『ルピュール』同人

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